昨日、練馬の光が丘公園で開催されたモンゴル祭りの帰りに、東中野のポレポレ劇場に寄って、35年前に撮られたというアイヌ民族の知られざる祭祀「チロンヌプカムイ イオマンテ(キタキツネの霊送り)」を記録したドキュメンタリー映画を観た。
それは、アイヌ民族の「自然」と「神」と共に生きる崇高な営みの内容だった。
1986年、屈斜路湖を望む美幌峠で、大正時代から75年ぶりに「キタキツネのイオマンテ」が行われた。
それは、仔ギツネの時からわが子と同じように育てたタキキツネを、親キツネたちが住む神の国へ、毛皮を剥ぎ、肉を取って、霊魂を送る儀式だった。
狩猟民族であるアイヌの教えでは、動物は自らの肉や毛皮を土産にして人間の国へやって来るとされる。
そのために、祭壇に野菜や魚や餅など沢山の土産としてお供えし、祭祀を司る明治44年生まれの75歳になる祭祀伝承者の長老・日川善治郎エカシは、間違って神の怒りをかうことがないようにと、一言一句に魂を込めて神への祈りを唱え、女や子供達は鶴の舞いなどを表現した踊りと歌を捧げ、霊魂送りされるキタキツネを喜ばせながら、祭祀は周到な準備のもと前夜から営まれるのだ。
アイヌ語の祈りは、現代日本語に訳されて字幕で理解できる。
神の国へ帰ったキタキツネは、人間の国の楽しかった様子を語り、神の国の仔ギツネたちは「私も、肉とふさふさの毛皮で覆って、それを土産に人間の国を訪れよう」と楽しみにするという。
生き物を殺生しながら生活する狩猟民族の「すべての生き物」と「神」と共に生きる世界観(生死観)の物語として、イオマンテの儀式を知ることができる。
ぜひ、機会があったら鑑賞お勧めのドキュメンタリー映画である。