この映画『 スパイの妻 』は、黒沢清監督が第77回ベネチア国際映画祭で、日本人としては17年ぶりの銀獅子賞(監督賞)を受賞した作品である。
僕はこのニュースを知ったときに、ぜひ鑑賞したいと思ったし、その前に小説も読んでおこうと思って、ノベライズではあるが行成薫の文庫『 スパイの妻 』を読んだ。
コロナ禍のために、映画を鑑賞するのはしばらくぶり。
前回映画館に入ったのは、コロナ感染拡大の非常事態宣言前の3月に『 三島由紀夫vs東大全共闘50年目の真実 』を観た時からだから、なんと半年ぶりだ。
夕方観たのだが、観客はそれほど多くなく、「密」を心配するほどでない鑑賞だった。
貿易会社の社長に扮するのは高橋一生と、その妻に扮する蒼井優。
この二人の俳優が、どんな演技をするのかと僕は興味津々だったのだが、「さすが・・」という好演技。
物語は、太平洋戦争開戦間近な1940年が舞台。
神戸で外国人を相手に貿易商を営む優作(高橋一生)は、商談のために訪れた満州で、偶然に関東軍の現地での残虐な行為を目撃。
その恐ろしい国家機密を知ってしまった優作は、この許されざる行為を、正義のために世界の世論に知らしめようとする。
妻の聡子(蒼井優)は、国家に対する反逆者と疑われる夫の行動に疑心暗鬼になりながらも、愛する夫と共に生きたいという思いから、夫の正義に身が破滅することをも覚悟して行動を共にする決意をする。
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これ以上は、これから鑑賞する人の迷惑になるので書かないが、タイトルで感じるようなサスペンス的な「スパイとその妻の物語」という要素はあるが、それよりも、優作の台詞にも出てくるのだが「僕はスパイなどではない。正義のためにやるのだ。」というように、敵国のスパイとしての任務遂行というより、自分自身の人間としての正義を貫こうとする男と、ただただ、愛する夫とともに生きようとする女の物語であると僕は思った。