今日の夕方から夜にかけて、関東に台風19号が襲来。
朝から雨脚が強い。午後に入ったら風も強くなってきた。
首都圏の交通網も、午前10時頃から計画運休が実施され動いていない。
ファーム町田店も臨時休業。
そんなことで、今日は部屋で過ごしている。
◇是枝裕和監督の『 海よりもまだ深く 』を観る
この映画、昨夜、TV放送されたのをビデオに撮っておいた。
外は台風19号の風雨。この物語にも、台風の夜のシーンがある。何とタイミングがいい映画鑑賞だと思いながら観た。
この映画、どこにでもあるような家族の物語だ。
淡々と、特別な事件が起こるのでもなく、かといって、特別に主人公に魅力があるわけでもなく、そんな、どこにでもあるだろう日常の暮らし。
それでいて、人生とは何か、家族とは何か、を考えさせ、過去の執着を捨てきれない人間の弱さ、哀れさ、それぞれが前に進もうとしながら、思うようにいかない人生、それでも、かすかな希望をもって前をみて生き続ける人生とは・・・そんなことが心に残る物語だった。
そんな日常の人間模様を描いていながら、おおきなテーマを投げかける。さすが是枝裕和監督だと思える映画だ。
もう少し、内容に触れながら印象に残っているシーンを書いてみる。
15年前に一度だけ文学賞を受賞したことのある主人公(阿部寛)は、小説家になる夢を諦め切れないまま、生活のため、離婚した息子の養育費のために「小説のための取材」と理由を付けて探偵事務所で働いている。そして、離婚した家族の元妻(真木よう子)や我が子への思いを捨てきれない。
主人公の母(樹木希林)は一人で団地生活。月一回の息子と過ごす日に、満足な食事をするほどのお金もないこともあって、そこを訪れる。
そこで、息子を迎えに来た元妻も入れて食事をする。その日は台風が近づいている日。結局、元妻と息子も、そこに泊まり一夜を過ごすことになる。
そんな状況の中での、壊れてしまった家族のやり取りが、実にひしひしと、切なく描かれ、その心情が伝わってくる。
主人公に母親が「海より深く人を好きになったことなんて、私にはない」「みんな、そうだと思うよ」「だから生きていける」というような意味深い言葉。
主人公が子供の頃にした冒険。台風の中、公園に行って、息子と一緒に滑り台の下に作られている洞窟に入って語り合う。息子に語る「夢があることが大切なんだ」という言葉。
心配して妻も公園に来て、壊れてしまった親子3人の家族がひと時を過ごすシーン。
やっぱり、是枝裕和監督だからの作品だとつくづく思う。
『 海よりもまだ深く 』(2016年5月公開作品)
監督・脚本:是枝裕和
出演者:阿部寛、真木よう子、樹木希林、リリー・フランキー、橋爪功など