昨日の朝日新聞朝刊の「朝日歌壇」には、先日、アフガニスタンで殺害された医師・中村哲さんを追悼する歌が、数多く載っていた。
どの歌も、なんとも言いようがない口惜しさや痛恨を詠んだ歌だった。
選者の一人の永田和宏さんは記す「アフガンで亡くなった中村哲氏を哀悼した歌が圧倒的だった。・・・十首すべてをその関係の歌にしたいくらいだった。」と。
読み忘れるのには、あまりにも惜しいので、転載させていただく。
◇馬場あき子さん選
(石川県・瀧上裕幸さん)
アフガンの大地に水を引いた日の中村医師の輝く笑顔
(埼玉県・島村久夫さん)
「一隅を照らす一灯でありたい」と記せし中村哲氏世界を照らす
◇佐佐木幸綱さん選
(奈良市・矢尾米一さん)
先生を返せお前も井戸を掘れ正しいことなら何故撃って逃げた
(瀬戸市 冬木裕子さん)
「悔しい」とただそれだけを思い泣く中村医師を識る人はみな
(伊丹市・宮川一樹さん)
質問ははぐらかさずに答えてた中村哲の人柄偲ぶ
(宝塚市・岸田万彩さん)
恩人と敵の区別ができなくて自動小銃放つバカモノ
◇高野公彦さん選
(観音寺市・篠原俊則さん)
アフガンの大地に水と人の「道」創りし仕事中村氏逝く
(松阪市・こやまはつみさん)
生きるため傭兵になる男らを緑の大地に導きし人
(那珂市・小野瀬寿さん)
薬では飢えや乾きは治せぬと水路を作った中村医師逝く
(高知市・山本登さん)
日本で政治家をして欲しかった中村哲は偉大なる人
◇永田和宏さん選
(筑紫野市・二宮正博さん)
無惨でも無駄と思えぬ死に様を中村哲は吾らに示す
(さいたま市・大浦健さん)
井戸を掘る(比喩でありまた比喩でなく)アフガニスタンに中村医師死す
(岐阜県・箕輪富美子さん)
訃報までその存在もアフガンでの偉業も知らざりし己を恥じぬ
(仙台市・村岡美知子さん)
助けんと尊きことを為すも人容赦なくいのち奪うも人ぞ
(近江八幡市・寺下吉則さん)
「自衛隊派遣は有害無益です」中村哲氏は言い遺したり
◇「俳壇」で選者の長谷川櫂さんが一席に選んだ句
(筑紫野市・二宮正博さん)
冬銀河中村哲に終はり無し