ユーラシア大陸に拡がる人類史上最大の帝国を築いたチンギス・ハーン。
彼の波乱に満ちたその生涯を描くという北方謙三さんならではの長編作品。
僕は、この『 チンギス紀 』シリーズを、第一巻から刊行されたら間をおかずに読んでいる。
今回の第6巻は先月末の刊行。早速、読んだ。
前巻の5巻では、意外な北方謙三さんのフィクション展開で驚いた。
日本ではチンギス・ハーンは、衣川の戦い(1189年)で自害したという源義経と同一人物であるという仮説、伝説があり、聞いたことがあるが、北方謙三さんは、『 チンギス紀(五) 』の中で、中国の北宋時代の物語の舞台となっている梁山泊、そこの頭領・楊令の孫と想定して物語を展開していた。
この第6巻では、そのチンギスハーンこと若き日のテムジンは、強大な勢力を持つ金国の要請に応じる形で、父・イェスゲイを暗殺したタタル族の討伐のために3千騎で出兵して、タタル族を壊滅するところから始まる。
そして草原の部族達は、親金国と反金国に色分けされながら、互いの勢力拡大の駆け引きにくれるが、テムジンのもとに草原の民は徐々に集まり、テムジン軍は7千騎を擁する規模になる。しかし、テムジンは鉄の精製や馬群の飼育に力点を置き、モンゴル全土征服を見据えて騎馬軍団だけの拡大を急がない。
いよいよ、チンギス・ハーンの偉業の後半に入ってきたという展開だ。
それにしても、毎巻そうなのだが、聞き慣れない部族名と登場人物の名前、ユーラシア大陸に配置されている部族の位置など、目次後の関係地図や登場人物の部族所属などを確認しながら読み進めなければならない。
しかし、歯切れのいい文体、イメージしやすい表現、そんな北方謙三さんの筆力と、その物語の展開に魅了されながら、今回も読み終わった。