最近読んだ物語2つのおしゃべり

 最近、読みたいと思う本が、次から次と出てきて「積ん読」状態。
 先日の野球WBCライブはTV中継を観て感動したが、TVドラマはほとんど観ていない。どちらかといったら夜も活字中心。
 そんな中で、最近読んだ2冊の物語。

 

北方謙三著『チンギス紀16 蒼氓(そうぼう)』を読む
 ユーラシア大陸に拡がる人類史上最大の帝国を築いたチンギス・ハーンの生涯を描く北方謙三さんの「 チンギス紀 」シリーズの16巻目『 チンギス紀(十六) 蒼氓』が発売されたことを新聞書籍広告で知った。
 早速、読む。

    

 僕は第一巻から読み続けているのだが、ロシアのウクライナ侵攻以降、この物語の読み方が変わっている。
 この物語は、モンゴル族の一氏族・キャット氏の長だったテムジン(後のチンギス・ハーン)が、同じモンゴル族の各氏族との戦いに勝利し、モンゴル族全体の長となり、さらにユーラシア大陸の偉大な覇者となるまでの数々の戦の物語なのだが、今回はいよいよ黒海の手前、中央アジアからイラン高原に至る広大な領域を支配しているホラズム・シャー朝の大軍との戦いが描かれていた。
 調べてみると、この1219年~1222年にかけて行われたモンゴル帝国のホラズム・シャー朝征服は「世界史上、最も凄惨な戦い」とまで言われる。

 今回のタイトルは『蒼氓(そうぼう)』だ。
 「蒼氓」とは「無名の民」を意味すると思うのだが、偉大な覇者と言われるチンギス・ハーンを、戦に翻弄されながらモンゴル帝国の統治になっていく地に住む「無名の民」たちは、何を感じて、モンゴル帝国を受け入れたのだろうかと、ロシアのウクライナ侵攻以降、物語を読みながら頭から離れない。
 いまも連日報道されている、ロシアとウクライナの兵士達の戦いと爆撃された戦禍の映像。モンゴル軍の首都キエフ征服は1240年だから、この物語も、その歴史上の大事件の時代に近づいている。

 

沢木耕太郎著『波の音が消えるまで』を読む
 僕がメルカリで入手し読んだ文庫(第一部~第3部)は6年前のものなのだが、この物語が書かれたのは9年前である。
 ノンフィクション作家・沢木耕太郎さんは、このような、いわゆるギャンブル小説も書いていたのかと驚きながら読んだ。

    

 さすが沢木さんである。

 サーフィン好きのカメラマンが、バリ島から日本に帰る途中でたまたま寄ったマカオで、カジノのバカラに魅了され、必勝法はあるのだろうかとバカラを極める求道者となって、バカラの世界に堕ちていく話なのだが、そのバカラゲーム、それを取りまく人間達、主人公を取りまく人達との関係、それらの描写は臨場感たっぷり。
 沢木さんが本当にバカラの世界にどっぷりと、その世界を体験して描いた物語と思えるような展開に、僕もたっぷりと引き込まれてしまった。
 先日読んだ『天路の旅人』は、未知の世界の果ての果てまで探索したいという男の物語だったが、こちらは、バカラという賭博の未知の世界に果てしなくのめり込む男の物語だった。