山中伸弥さんのインタビュー記事

 先週土曜日の朝日新聞15面に、京都大学iPS細胞研究所長・山中伸弥さんのインタビュー記事「分水嶺の科学技術」というのが載っていた。

 

分水嶺?って何だろうか」と思って読んでみたら、リード文に「平成の30年間で、生命科学は飛躍的に進歩した。一方で原発事故にも直面し、科学技術の使い方を誤れば大きな打撃になることも痛感した。人類が手にした大きな力をどのように使えば幸せな未来につながるのか。私たちはその選択をすべき『分水嶺』に立っているのではないか。」と記された内容だった。

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   僕が印象的に感じた山中伸弥さんの言葉を抜粋し紹介する。

 

 ――科学の進歩で寿命が延び、社会的な弊害も指摘されます。
 「私たちは平均寿命と健康寿命の差を1年でも短くすることを目指しており、ただ寿命を延ばす研究はしていません。30代の初めのころ、留学先の米国の指導者がこう言いました。『シンヤ、一生懸命研究すると、心筋梗塞で亡くなる人は減るだろう。個人にはいいことだが、社会として本当に幸せなのか』。当時、そんなことは政治家とかに考えてもらえばいいと思い、一生懸命研究することしか考えませんでした。それから25年。医療技術の発達もあり平均寿命は延びました。教授の定年も65歳になり、将来は70歳になるかもしれない。若者の職を奪うことになりかねません。どこの組織でも同じです」
 ――「プロ」から見て、近年の科学の進歩をどうとらえますか。
 「生命科学は、研究が飛躍的に進み、遺伝子の書き換えもできるようになりました。全人類の知能を上回るAIも登場するでしょう。原子力はすでにできてしまっています。私たちは、地球の40億年あまりの歴史において、クリティカルな時代にいるのではないでしょうか。人間はわずか数十年で深海にも宇宙にも行けるようになりました。地球が始まって以来のモンスターです。科学技術に携わる者として、今を生きる人々の幸せも大切ですが、長い目でみて、地球の運命を左右する大変な時代にいると自覚しています」
 ――令和はどんな時代になるでしょう。
 「いまは山頂で、どちらかに転がってもおかしくない状況だと思っています。科学技術は両刃の剣です。iPS細胞の発見もパンドラの箱と言われることがあります。これからが幸せになるのか、とんでもないことになるのか。令和は、どっちに行くかが決まる時代になると思います。いったん決まると逆戻りはとても難しいでしょう。1万年後、今を振り返る知的生命体が地球に残っていれば、『2030年、2040年くらいがターニングポイントだったね』と思うかも知れません」

 

 山中さんが言うように、現在は確かに「分水嶺」なのかも知れない。それは「平成の30年で、生命科学の研究が飛躍的に進み、地球の歴史でなかった力を手にしてたモンスターに人間はなってしまった。」「令和の時代は、急速に進化した科学技術で、人類と地球が、さらに光り輝くか、とんでもないことになるか決まる時代。決まると後戻りできず、責任の重い時代」と山中さんは語る。