村岡到さんが編集長の季刊誌『フラタニティ』に、「文学作品から沖縄に触れる」というようなテーマで、原稿を書いてほしいとの要請があり、まずは、沖縄出身作家の芥川賞受賞作品を読んでみようと取り寄せたのが、この『新装版 沖縄文学選』(勉誠出版)だ。
沖縄の作家で芥川賞を受賞した作家は4人いる。
1967年に大城立裕さん、1971年に東峰夫さん、1995年に又吉栄喜さん、1997年に目取真俊さんだ。
その4作品共に、『新装版 沖縄文学選』に収録されているので読んでみた。
◇大城立裕さんの『カクテル・パーティー』は、
米国統治下の沖縄で、日本人、沖縄人、中国人、米国人の4人が登場しての物語で、彼らが米軍基地内で親善パーティーを開催時、基地外では米兵による高校生レイプ事件が起こり、その米国統治下での理不尽な事件対応と、それぞれ国籍を異にする人物の、微妙な思惑と関係から国際親善の欺瞞が暴露されていく内容だ。
◇東峰夫さんの『オキナワの少年』は、
大城立裕さんの『カクテル・パーティー』が米国統治下の沖縄での知識階層の物語であるとすれば、それに対して、「ゴザ」という米兵相手に商売する街を舞台とした、そこで暮らす庶民階層の少年を主人公にした物語だ。
◇又吉栄喜さんの『豚の報い』は、
戦争の傷跡とか、基地の問題、政治的状況下の問題ではなく、沖縄の固有の風習を軸にした庶民の暮らし、宗教的営みを、生命力あふれ、ひたむきでどこかユーモラスな行いを題材とした物語だ。
◇目取真俊さんの『水滴』は、
主人公の奇怪な病気を題材にして、沖縄戦での出来事、自分が生きるために仲間をも見捨てたことによる罪悪感に悩まされながら、死者と生き残った者、過去と現在が交錯して「生きることとは」を問うている物語だ。
僕は、この4作品の中で東峰夫さんの『オキナワの少年』に一番心惹かれた。
それは、先日、直木賞を受賞して話題となっている真藤順丈さん『宝島』に共通するものを持ったモチーフからだろうか。
純粋に、ひたむきに、そして、したたかに、米国統治下という政治状況の理不尽さにも挫けずに、前を向いて生きようとする少年の姿に、清々しい読後感をもらったからかも知れない。
この読後感想は、もう少し詳しく、後日に記述したいと思う。