鎌田實さんの本 『 「イスラム国」よ 』

 先日、研鑽会が終わったときに、シズコさんが「私、読むのが遅いから、先に読む?」と言って置いていったのが、鎌田實さんが書かれた『 「イスラム国」よ 』という本。
        
 鎌田實さんは、長いこと長野県諏訪中央病院で地域医療に従事していたお医者さんだ。現在は、そこを退任して、日本・チェルノブイリ連帯基金(JCF)理事長や、日本・イラク・メディカルネット(JIM−NET)代表をされていて、本の帯にも『僕は聴診器でテロとたたかう』と書かれているように、現在はアラブを中心に医療サポートを続け、難民キャンプなどに出かけて医療活動を実践されている人だ。

 この本では、「イスラム国」がなぜ生まれたのか、イスラム社会が今どういう状況なのかをわかりやすく解説してくれている。
 鎌田さんは戦争に反対し、戦争で傷ついた弱者に寄り添い、自ら医療という行為を実践しているのだが、その思いが熱く伝わってくる内容だ。
 なぜ、非道な過激的「イスラム国」が生まれて、そこに憧れる若者がいるのかを、アフガン戦争やイラク戦争などから現在までの流れの中で解き明かしてくれている。
 鎌田さんは、イスラム教の人々はとても優しく、日本に対して好意を持ってくれているという。日本からの真の人道支援がいかに大切か、それがアラブに平和をもたらすと信じて、イスラムの人たちに温かい眼差しを向ける。
 鎌田さんが、現地医療での事実の一つとして紹介されているのが、イラク戦争で使われた「劣化ウラン弾」のこと。それが使われた地域に白血病小児癌が多い。「因果関係を証明するのは時間もかかるし難しいが、何らかの関係があると考えざるを得ない。」とも書いている。
 
 もう一つ、イスラム教についての説明で、『 「目には目を」の本当の意味 』を書かれていて印象に残ったので紹介したい。
──イラクイスラム教徒の友人から「イスラムは許しの宗教だ」と言う話を聞いたことがあります。イスラム教徒と言うと「目には目を、歯には歯を」という厳しい掟をつい思い出してしまうけれど、そのイラク人はこう言いました。
「ひどいことをされても許していい、という教えがあるんだ。自動車をぶつけられて足を切断しても、ていねいにお詫びやお見舞いや生活の支援があれば、『目には目を』と、同じ罰を与えたりしない。本人が納得できれば、それで罰は軽減されるんだよ」
 彼はさらに続けます。
「どうしても許せない時でも、その人を抹殺したりしてはいけない。目をやられたらやり返しても目までだぞ、それ以上傷つけてはいけないというのが、イスラムの教えだ」(本書111頁)──

 ちなみに、この本の印税は100%支援金になるそうだ。