映画 『 星めぐりの町 』 を観る

 小林稔侍の映画初主演作品だという映画 『 星めぐりの町 』を、先日、帰宅時にちょっと時間の余裕があって観る機会があった。
       
 「小林稔侍って、映画では主演をしたことがなかったんだ。」と、ちょっと意外に思いながら、気になっていた映画。
 映画は、田圃の土手に桜が咲き、小林稔侍が農作業をしている風景から始まる。
 ここって、何処だろう、東北の田舎かな?って観ていたら、この映画の舞台は、愛知県の豊田市だった。
 妻を早くに亡くし、娘と2人で暮らす実直な豆腐職人の主人公・島田を演じるのが小林稔侍だ。
 娘は、壇蜜が演じている。
 そこに、亡くなった妻の遠縁で、東日本大震災で家族を失った少年が引っ越してくる。
 深く傷ついている少年。
 なかなか心を開こうとしないが、移動販売車で一緒に豆腐を売りに出かけたりしながら、静かに静かに、少年と接する主人公の島田。
 少年は、次第に心を開いて、2人の家庭に入ってくる。
 豆腐づくりの作業場の掃除も自分からやり出したりする。
 しかし時には、地震に怯えて家を飛び出したり、妹の姿を同年代の女の子に重ね合わせて追いかけて怖がられたりと、震災の心の傷からはなかなか脱しきれない。
 そんな少年を、父親の眼差しで、島田は忍耐強く、困難をも乗り越えて生きる男の子として育てようとする。
 そんな島田と、娘と、少年の心の交流に心打たれる。
 そして、最後は、宮沢賢治の「雨にも負けず・・」を口ずさみながら、少年の口から「そんな豆腐屋に私はなりたい」という言葉が出る。
 小林稔侍の持ち味がじっくりと染み出ているし、オートバイを乗り回し、腕のいい整備工としての活発な娘を演じる壇蜜もいい持ち味が出ている。
 自動車の町・豊田市と、その豊田市にもこんなに桜がきれいな田舎もあるんだよって、ちょっと、豊田市のPR映画的な感じもするが、震災に遭った少年が心の傷から立ち直っていく姿にちょっと涙を誘われながら、ほのぼのと、安心して観ることができる映画だった。