すみだ北斎美術館に行く

 今日の東京は寒気が戻ってきて、晴れてはいたが寒い一日。
 我が家を1時間ほど早めに出て、案内所に行く前に2時間ほど寄り道をする。
 行きたいと思いながら、12月に時間を取れなかった「すみだ北斎美術館」に寄った。
 11時から夕方までは案内所で仕事。


◇昨年5月に、朝井まかてが書いた小説『眩(くらら)』を読んだ。
 この小説は、葛飾北斎の三女・お栄こと画号を「葛飾応為」という天才浮世絵師の生涯を描いた物語だった。
 さらに、昨年11月にNHKの『ロスト北斎「幻の巨大絵に挑む男たち」』を観た。
 これは、関東大震災で焼失し、残されている明治時代に撮影された白黒写真を元に、葛飾北斎が晩年の86歳に描き、牛嶋神神社に奉納した幅3メートル近い極彩色の巨大絵「須佐之男之命厄神退治之図」を、最先端技術を駆使して分析し、伝統的な修復技術で復元するプロジェクトのドキュメンタリーだった。
 こんなことで、昨年11月22日に、両国駅近くに「すみだ北斎美術館」が開館したことを、ニュースで知って、ぜひ行こうと思っていた。
       
       
        

◇4階の常設展示会場に入ると、先ず、復元された「須佐之男命厄神退治之図(すさのおのみことやくじんたいじのず)」があった。
       
       
       
 復元記録のビデオも放送されていた。

◇館内は照明を落として、作品だけが浮き立つような展示。
       
 常設のレプリカ作品は撮影可だったので、何点かカメラに収める。
       
       
       
       
       
       
       
 北斎のアトリエを再現した模型は実にリアルだ。
       
       


◇常設展示室を鑑賞し終わって、同時開催の開館記念『北斎の帰還―幻の絵巻と名品コレクション―』特別展を観る。
      
 墨田区のコレクションから北斎の肉筆画、版画、摺物、版本などが展示してあったし、海外に流出して所在不明になっていて、約100年ぶりに再発見され、昨年、墨田区が取得した約7メートルの絵巻『隅田川両岸景色図巻』が全巻一挙に展示してあった。
 それと、『冨嶽三十六景』などの代表作も展示してあった。
 こちらの特別展は、残念ながら撮影禁止だった。


葛飾北斎は、小さい頃から手先が器用で14歳で版木彫りの仕事につき、彫りながら文章や絵に親しむうちに「自分でも描いてみたい」と思うようになり、18歳の時に人気浮世絵師の勝川春章に入門し描き始めた。
 90歳で生涯を終えるのだが、その間に描いた絵は3万点とも言われる。
 前衛・奇抜にすら感じさせる独創性豊かな構図や、スケールの大きさを感じさせる独特の風景、そして緻密な描写。
 作品一つ一つを鑑賞しながら、確かに、凄い絵師だったことが分かる。
 そして、江戸後期に、このような天才的「絵師」の存在と同時に、版木を彫る「彫り師」や、紙に摺る「摺り師」と呼ばれる高度な技術を持った職人がいたことにも感動する。
 また、葛飾北斎は、1999年にアメリカの雑誌『ライフ』の企画「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」で、日本人として唯一86位にランクインしている。