映画『HOKUSAI』を観る

 「観たいなあ~」と思いながら、ついつい忘れかけていて、一昨日慌てて、いつも行っている小田急線の新百合ヶ丘駅近くの映画館の上映を確認したら、なんと24日で上映終了で、現在は一日一回の上映。「おお~、なんとか観に行こう」と、ちょっと慌てて観た次第。


 この映画『HOKUSAI』は、江戸時代後期の浮世絵師・葛飾北斎の生涯を描いた映画だ。

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 北斎は、長寿90歳で生涯を終えるのだが、その間に描いた絵は3万点とも言われる。
 前衛、そして奇抜にすら感じさせる独創性豊かな構図や、スケールの大きさを感じさせる独特の風景、そして緻密な描写。
 その画法は、19世紀にヨーロッパでジャポニズムブームを巻き起こし、ゴッホ、モネ、ドガなど数々のアーティストに影響を与え、1999年にアメリカの雑誌『ライフ』の企画「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」で、日本人として唯一86位にランクインしているほどの浮世絵師だ。
 そんな北斎の絵師としての歩みと、絵画追及に賭ける姿に関心があり、両国にある「すみだ北斎美術館」にも時々行くし、近隣の美術館での北斎企画展にも出掛けている。
 今回の映画では、どんな北斎の生き様を描いているのだろうと興味があった。

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 映画『HOKUSAI』は、一言で言って「やっぱり観てよかった。観る価値十分」の作品だった。
 なんと言っても、キャストの演技が迫力満点で圧倒され観応えがある。
 葛飾北斎の青年期~壮年期を柳楽優弥が、そして老年期を舞踊家田中泯が演じる。
 洒落本や浮世絵は世の風紀を乱すという幕府の方針によって取り締まりが厳しい中、多くの絵師を見出し育て、本や絵の版元として江戸で評判の耕書堂の蔦屋重三郎阿部寛
 武家の身分でありながら身分を隠し、老年期の北斎が挿絵を描く相手の人気戯作者の柳亭種彦永山瑛太
 同時代のライバル浮世絵師の喜多川歌麿玉木宏
 ・・・などなど、個性派俳優の迫力ある演技が素晴らしかった。


 特に、舞踊家田中泯の演技は凄かった。先日観た『いのちの停車場』でも、吉永小百合が演じる主人公の父親役で、その時は、渋い、物静かで重厚な老人を演じていたのだが、今回は北斎の狂気と気迫に満ちた絵師の生き様を、さすが舞踊家田中泯だと思わせる演技だった。

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 浮世絵、北斎に興味のある人には、お薦めの映画である。