文庫・原田マハ著『翼をください』

 先週からカバンに入れておいて出張の電車の中などで読んでいた文庫は、原田マハ著『翼をくださいだ。
 上、下ともに読み終わった。
 先週、駅ナカの本屋で選んだ文庫だ。
 原田マハというだけで買った。今回もやっぱり原田マハは僕を裏切らなかった。
       
 太平洋戦争の直前・1939年。
 世界一周飛行を企画したのは毎日新聞社(当時、大阪毎日・東京日日)。
 使われた飛行機は海軍の山本五十六中将の了承で払い下げられた九六式陸上攻撃機を長距離飛行に改造した「ニッポン号」という純国産飛行機。
 何と約二か月かけて世界一周という快挙を世界で初めて達成。
 しかし、戦後GHQによって意図的に葬られたとのこと。
 僕は、この事実を知らなかった。
 そして、アメリカでもその2年前に、世界一周を目指した女性パイロットがいた。
 彼女は世界一周目前にして太平洋上で失踪した。
 この二つの実話(ノンフィクション)を、原田マハは巧みに一つの物語(フィクション)として書きあげた。

 なかなか、面白かった。ついつい引き込まれてしまった。
 失踪した女性パイロットが山本五十六に助けられていた。
 山本は彼女を祖国に戻すために、この世界一周飛行に彼女を極秘で乗せる。
 彼女が乗っていたからこそ、達成された「ニッポン号」の世界一周。
 彼女と日本の乗組員の間に生まれる心の絆。
 空から見たら国境はどこにもないという「世界はひとつ」の実感。
 女性パイロットと「ニッポン号」乗組員の、平和への願いを綴られた感動作だった。
 平和主義者として山本五十六が登場するし、アインシュタインも登場して、アインシュタインには「世界はひとつではない、だから共存が必要だ」と語らせる。
 「ほんと?」と思いながら、フイクション小説として、実に面白く読ませてもらった。