昨夕、上野の国立西洋美術館に寄る

 昨日は、ファーム町田店が休みなので、みんなで山(乗鞍岳)に行こうとシカタ君が計画してくれていたのだが、天候も思わしくないので2週間後に延期となった。


 僕は、やっておきたい仕事もあったので朝から案内所へ。 
 夕方、朝からの雨も止んだので「こんな天候なら、きっと混雑はないだろう」と、帰宅前に上野の西洋美術館で開催されている「松方コレクション展」に行く。

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 「日本の青少年や画家を志す若者に、本物の西洋美術品に触れる機会として、日本に美術館を作りたい」と、私財を投じてロンドンやパリで大量の美術品を買い求めた実業家・松方幸次郎の偉業と、彼が収集した美術品にたっぷりと触れることができた。

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 彼が、収集した西洋美術品は2千点とも3千点とも、さらに海外に流失した浮世絵の買い戻しも含めたら8千点とも1万点ともいわれる。
 しかし、その収集した美術品は、昭和の金融恐慌で彼が経営する川崎造船所は経営破綻し作品は売却されたり、ロンドンに保管していた作品は倉庫火災で焼失したり、パリに残された作品は第二次世界大戦後に戦勝国フランスに接収されたり・・。
 松方幸次郎の「日本に西洋美術品を展示した美術館を作る」という夢は途絶えたかに思われたが、当時の総理・吉田茂を始めとした、彼の志を何とか実現しようとする美術史家の努力によって、戦後、フランスから日本に375点の作品が寄贈返還されて、その展示美術館として国立西洋美術館が誕生した。
 今回は、その国立西洋美術館の設立60周年にあたっての特別企画として開催されている。

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 この「松方コレクション」の経緯や変遷については、先日、原田マハさんの直木賞候補作にもなっている『美しき愚かものたちのタブロー』を読んでいたので、僕はその内容を辿りながら、ひとつ一つの作品をじっくり鑑賞した。

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 展示の中には、最近発見されたロンドンで焼失した作品リストもあったし、川崎造船所の経営破綻で売却され、現在、大原美術館北九州市立美術館の所蔵や三井住友銀行などが所有している作品、フランスが返還を拒んだ傑作のゴッホの『アルルの寝室』やマティスの『長椅子に座る女』なども展示されるという「松方コレクション」の大集合的展示だった。

 

 それにしても、松方幸次郎という偉大な実業家がいて、彼が私財を投げ打って集めた美術品を命を懸けて戦時下で守り抜いた日置釭三郎がいて、戦後、没収された作品をフランスと粘り強く交渉して返還を実現した人達がいたからこそ、こうして鑑賞できるのだと、先人達の偉業に感謝するひと時でもあった。