河合雅雄さんのインタビュー記事

 新聞を読んでいて、気になる記事が目にとまっても、じっくり読む時間がないときは、その紙面を抜き取っておく。
 そんな抜き取っておいた紙面の中に、東京新聞14日・日曜版の「あの人に迫る」というインタビュー記事に、霊長類学者の河合雅雄さんが登場していた。
        

◇冒頭の「なぜ霊長類学を選んだのでしょうか」という質問に、
 戦争でたくさん人を殺してきたと言っていた知人が、田舎に帰ったら、それを忘れて、ものすごくいいおじさんになった。それで「スイッチを切り替えるように善悪が変わる人間とは一体何なのか知りたかった。」と答え、それを「哲学などではなく進化のレールをたどって考えてきました。」と述べている。
 そんな人間の内面のテーマを、霊長類の進化という視点から研究するというのが面白いなあと思って記事を読んだ。

◇河合さんがエチオピアゲラダヒヒの研究をやっていて、
 チンパンジーは攻撃的で仲間も殺すのに、ゲラダヒヒには縄張りもなく、順位もなく、お互いが対等なことで群れを維持していることを発見したらしい。
 「サルにはゲラダヒヒボルボのように戦いを避けて協調する系統と、攻撃的な系統があるんです。人間は両方の性質を持っている。戦争してむちゃくちゃをする一方で、愛とか平等を徹底的に説く。個人の中にも両方ある。必ず悪を持っているからなくそうとしてもだめで、抑えながら良いところを伸ばすべきです。」と言っている。

◇さらに、子どもには自然と触れ合う教育が大切だと強調している。
 「人間はみんな緑が好きで、森に行くと安らぎを感じます。それは祖先がサルだから。サルは四千万年前から森の生活をして、上下左右全部緑の中にいることが遺伝子に入り込んでいます。人間は数百万年前に現れて、森を出たんです。」
 河合さんは、16年前からボルネオに子ども達を連れて行き、8日間ジャングルで生活する「ジャングルスクール」をやっているらしい。
 「今は子どもだけの世界がなくなって、大人の目がありすぎます。特に母親の目。子どもが一家に四人以上いた時代と違って、一人か二人にエネルギーが向かって、いろいろなことを言いすぎます。自然の中で遊ぶ機会を大人が奪ってしまったから、返してあげないといけません。」と述べている。

◇僕たちヤマギシでは、今年の夏も「子ども楽園村」を開催する。
 全国から大勢の子ども達が参加し、自然と、農ある暮らしのヤマギシの村の中で、子ども達同士が生活を造る一週間の合宿生活だ。
 その「子ども楽園村」で、「自然の中で遊ぶ機会を大人が奪ってしまった〝もの〟」を、子ども達に返せる環境を用意できたらいいいな、と思った。