読書についてのおしゃべり

◇読書は「どこでもドア」的存在
 「ドラえもん」の声の声優・大山のぶ代さんが、認知症で闘病中であるというのをニュースで先日知った。
 「ドラえもん」といったらあの声だし、あの声だから「ドラえもん」がイメージできる。
 その声の主が認知症か・・・と、「ドラえもん」と認知症がなぜか結びつかない。
 その「ドラえもん」に出てくる道具に、遠くの場所に瞬時に移動することができる「どこでもドア」がある。
                   
 僕のブログを見てくれている人から、「本をよく読んでるね」とよく言われる。
 実は僕にとって、読書がこの「どこでもドア」的行為なのだ。
 出張中の移動や待ちの時間、そして、毎日の自宅から高田馬場までの通勤電車内での時間。その時に、何か読み物があったら瞬時に移動したような感覚になって目的地に着いている。時々、小説の主人公に感情移入しすぎて、目的地を飛び越えてしまう過剰移動〝乗り越し〟も発生するくらい効果があるから注意している。
 そんなことで、今日も「どこでもドア」的に読み終わった本を紹介したい。


社会学者・橋爪大三郎の『面白くて眠れなくなる社会学
 書店を覗いたときに、平積みされていたので手に取ってページをめくってみたら読みたくなって買った本だ。
          
 実に分かり易く、書いている。
 著者は「社会学は、社会の一部を切り取るかわりに、社会をまるごと考察します。」「人間が社会を生きていくとき誰でもがぶつかる問題を、社会学は、残らず正面から受け止めるということです。」と書いているように、身近なテーマを丁寧に解説し、分かり易く、日常生活との関わりまで引きつけて、その考察を書いている。
 そのテーマは、
 言語、戦争、憲法、貨幣、資本主義、私有財産、性、家族、結婚、正義、自由、死、宗教、職業、奴隷制カースト制、幸福
 最後には、社会学に興味をもったらお薦めと、内田樹見田宗介の本の読書案内まで付いている。
 著者は、中高生や若者向けに書いたようだが、僕のように社会学をちゃんと勉強したこともない者には、各テーマの解説と考察が新鮮で、大いに興味がわき「そうなんだ!」と納得する書籍だった。


◇例えば最初の『言語』

 「人間は言語を使うことによって、社会をつくることが可能になっている」と述べて、言葉について考察している。
 その中で、著者の解説によると、
 言葉は、モノを指し示すことができる。それを名詞(名前)というが「名前はデジタルな性質を持っているが、現実のモノはアナログな性質を持っている。」と言う。
 それを色で説明すると、
 言葉は、白は「シロ」、黒は「クロ」と言う。中間は「ハイイロ」という言葉で定義している。しかし、現実の世界では、白は段々、灰色となり、黒となる。現実の世界は連続的なのだ。
 「確かに、そうだ!」と僕は納得。
 そのデジタル的言葉には〝意味〟があって、その集積が全体になって、意味ある空間になり、それを共有できるから、人間と人間が協働する能力が備わり、目の前にモノがなくても考えることができるし、社会を創っていける可能性があるらしい。


◇今、政治的話題になっている『憲法

 「憲法は、手紙です。人民から、国にあてた手紙。その国の政府職員に向けて、こうしなさいと約束させるものです。」「一般の法律は、国が決めて、人民が守ります。」「憲法は、この向きが正反対です。人民が、約束を守らせる側。国(政府や議会や裁判所)が、約束を守る側です。人民が政府に言うことを聞かせるところに、憲法の本質があります。」と解説している。
 この項を読んで、現在、安倍内閣が「集団的自衛権」などの安保法案を、憲法解釈という手法で閣議決定し、国会に持ち込み通そうと、なぜしているかが分かった。
 政府には「憲法」を守る義務があって、解釈の範囲を拡げるしか方法はないのだ。


◇これ以外にも

 「戦争」では、どうして人を殺しても殺人罪にならないのか。ケンカと戦争の違い。「私有財産」とか「自由」とは何か。「宗教」は人類文化にとって何か。「死」や「幸福」とは何か。等々、それらの考察に、実に興味をもって僕は読んだ。