古書の謎解き『ビブリア古書堂の事件手帳』

 2週間ほど前に買って鞄に入っていた『ビブリア古書堂の事件手帳』第6巻
 九州のサユリさんからは、今週初めに「私はもう少しで読み終わりますよ」とメールをもらったが、僕は一気に読んだと言うよりも、通勤電車の中で、その日の気分に任せて一章ずつ読んだ感じ。
           
 このビブリア古書堂の事件手帖は、三上延による古書にまつわるミステリ小説シリーズなのだが、第1巻から僕はハマって、続編が出るたびにすぐに買い求めて読んでいる。
 2012年には、新刊を扱う書店員達が投票して決まる「本屋大賞」にノミネートされた人気小説なのだ。

 なぜ、僕はハマったのか。
 それは、僕の書籍に対する知識欲を適度に刺激しながら、ワクワクさせる謎解きストーリーが展開するからだと思う。
 著者の三上延は、どうしてこんなにも古書についての知識が豊富なのかと驚かされる。
 経歴をみると古書店で働いたことがあるというが、それにしても並の古書知識ではない。
 そんな著者が描く物語の主人公は、古書に関して豊富な知識があり、美人ではあるが、極度の人見知りの古本屋の女店主・栞子(しおりこ)さんである。
 彼女のところに、客が持ち込む古書にまつわる問題を、豊富な知識を駆使しながら解いていくのだ。

 物語の中に出てくる古書は実在のものである。
 この第6巻は太宰治の作品を取り扱って、第1章は「走れメロス」だし、第2章は「駆込み訴へ」で、第3章は「晩年」である。
 「走れメロス」は読んだ記憶があるが、他の2つは僕は読んだことがない。「駆込み訴へ」などは太宰治にこんな作品があることも知らなかった。
 こんな作品を通して、太宰がどんな小説家だったのか、その初版本はどうだったのか、なぜ、その初版本を古書マニアが追い求めるのかを、そこに関わる人びとの心理を推測し、それを巧みに交差させながら、謎解きが展開するのだ。
 文庫の帯には「古い本には逃れざる因縁が宿ります」とある。
 太宰治という作家は誰でも知っているだろう。ちょっとでも興味がある人にはお薦めの小説だ。疲れた頭の気分転換には打って付け間違いない。

 多足になるが、この小説はTVドラマ化されて、主人公の栞子さんを剛力彩芽が演じている。それを観ているために、小説では長い黒髪の主人公なのに、どうしてもショートカットの剛力彩芽の顔を思い出しながら読んでしまった。