特講を受けた西原光雄さん著『ゆいまーるの世紀へ』

 西原光雄さんは沖縄在住だ。
 ヤマギシズム農法』を読んで、ヤマギシを知り、その後、村岡到さんの新刊ユートピアの模索・ヤマギシ会の到達点』と『農業が創る未来・ヤマギシズム農法から』を読んで、5月の特講に参加した。
 特講が終わった日に、西原さんにお会いした時、僕は西原さんが刊行した3冊の書籍をいただいた。
 その一冊が『ゆいまーるの世紀へ ─ 人類共生・共存への道』
           
 現在83歳の西原さんが70歳の時に著した本だ。
 西原さんは「この本は自費出版して、手元に残っているのは2冊ですが1冊を置いていきます。」と渡してくれた本だ。
 その『ゆいまーるの世紀へ ─ 人類共生・共存への道』の内容を紹介する。
 少し長くなるが、西原さんという人が、どんなことを考え実践してきた人かを知ることができるのではないかと思って、ここに記してみたい。
           
 西原さんは、まえがきの冒頭に、
 「本書は、社会的には何の地位も名声もない一地球庶民が、七十年の人生を振り返り、想うところがあって書いたものです。」と書き、
 「現在の資本主義社会の仕組みの中で優先される利潤追求故に、人類の不幸を招く戦争や飢餓が引き起こされてきた事に疑問を抱き、これから先、すべての人類が等しく幸せに生存を続けていくためには、利潤追求を絶対目的とした社会の仕組みを改める以外に道はないという、私の信念によるものなのです。」と述べている。
 そして、まえがきの最後には、
 「私の持論に対して、権力を担っている政治家や膨大な富を保有する資本家など、世界の政治経済を牛耳っている一部階層の富豪は言うに及ばず、自称中流階級だと自負している一般庶民からも、異議異論の噴出することは百も承知の上で、この本を書きました。」
 「複雑極まる現代社会の仕組みが、そう簡単に改革できるものかと、一笑する読者もおられるでしょう。然し、妥協するわけにはいかないのです。現在の社会制度を決して是認することはできないのです。」と、この本を刊行した、並々ならぬ決意が述べられている。
 第一章は「戦争」
 ここでは、戦争の大半が戦勝国に起因するのに、戦争犯罪者として問われるのは敗戦国だけという片手落ちのことや、テロ発生の要因を述べ、今後は、まだまだ不十分ではあるが国際刑事裁判所が出来たことに希望を託している。
 第二章は「教育」
 教育の「功」と「罪」を自分が受けた教育体験から考察し、一国を基準に編み出した教育制度でなく、全人類に通用する「宇宙意識」を根元にした、愛と善意の「人類共通の地球教育基本法」を提言している。
 第三章は「イデオロギー
 資本主義と共産主義、両主義共に結果的に人類の幸せにつながっていないと考察し、人間疎外の改革を意図した協同組合思想を紹介している。
 そして、「孤島の琉球に輝く共同組合」が過去の沖縄にはあって、それは「ゆいまーる」という「相互扶助」の精神的な基盤があったからで、今でも沖縄にはそれが根付いていることを紹介し、「この仕組みと精神を二十一世紀の人類社会に、発展させて行きたいと願わずにはいられません。」と述べている。
 第四章は「特許と市場」
 現在の特許制度の矛盾、グローバル市場の本質を考察し、それへの警告。
 第五章は「カネ(貨幣)と富」
 「カネは生活の手段で目的でない」ことを述べ、富の独占や貧富について考察し、「地球上の富は全人類が共有・共用すべき」と述べ、「人類共通の貨幣制度」を提唱している。
 第六章の「国境と街区」では、国境の存在がいかに無駄で世界平和を妨げているか、国境の撤廃を提唱し、
 第七章の「人間の生存」では、基本的な衣食住のあり方、世界の食糧生産と消費について数字を引用しながら考察し、「食糧を利潤追求の具にするな」と警告する。
 最後の第八章「人間の生涯モデル」では、人間生涯の年代を4段階に分け、その活動と役割を考察し、人生最終の第四区分を「樂徳期」として、「生まれて来て本当に良かった」と、心の底から感じられる、煌めく人生の最終時期とすることが「私の提唱する理想」と述べているのだ。
           
 この『ゆいまーるの世紀へ ─ 人類共生・共存への道』という本、13年前に西原さんが刊行したものだが、今まさに、輝きを増す内容である。
 アマゾンで検索すると「一時的に在庫切れ、入荷時期は未定です」と表示されているのが残念である。

 *沖縄の「ゆいまーる」については、5月8日のブログに記載したので、それを参照。