中国関係の新書を読んで

書店に平積みされていた新書の『テレビに映る中国の97%は嘘である』という、ちょっとショッキングなタイトルに惹かれて立ち読みし、結局、この新書を買ってしまった。
           
 なぜ買ってまで読みたくなったかというと、
 第2章に「中国一の金持ち村」というのがあったからだ。

◇かれこれ10数年前、中国河南省の「南街村」という、今でも毛沢東時代の人民公社社会主義統治で村を運営し、個人の所有地や通常の給料は存在せずに、食材は配給され、村民は同一の家具が備え付けられたアパートに暮らすなど、村民の平等を謳った村を訪れたことがある。
 先方も、日本という資本主義の体制の中で、ヤマギシの存在に興味を持って、村の幹部が何度か参観に来たりと、相互訪問しあって交流が続いていたが、ここ数年は交流が途絶えている。
 その「南街村」と交流している中で、同じ様な村が江蘇省にもあると聞いていたのが、この新書で取り上げられている『華西村』だ。
 一度、訪問してみないかとも誘われていたが、訪問する機会はなく、手元にパンフレットだけが残っている。
            


◇「南街村」はインスタントラーメンなど麺製品の村立企業で成功をした農村だが、「華西村」は鉄工業製品の村立企業で成功した農村だ。
 今の「南街村」情報が少ないので、現状は定かでないが、僕たちが訪問したときには、中国全土からバスを連ねて観光客が大勢訪れる有名な「村」だったが、この新書によると、今の「華西村」にも大勢の観光客が訪れ、328mの高層の「新農村ビル」と呼ぶ高級ホテルまである「中国でもっとも豊かな農村」と言われているという。
 読んでいて「南街村」との共通点も多々あることに気づく。
 強烈なカリスマ的リーダーのもとで村が運営されているということ。
 「ともに豊かに」「平等」を謳いながら、もともとの村民と、村の発展と共に増えた新村民、近隣の農村からの企業労働者との生活格差や、もともとの村民を主とした上下縦社会で運営されている実態。
 僕は「南街村」に2度訪問したのだけれど、そんな実態で運営されているのを知って「このまま発展繁栄が続くのだろうか。」と疑問を持った記憶があるが、この新書の著者も「華西村」に対して、同じ様な感想を抱いている。
 そんなことで、「南街村」訪問の時のことを思い出しながら、興味を持って読んだ。

◇それ以外に取り上げられている内容も、なかなか興味あるものだった。
 反日デモのこと、「ワイロ」や「偽物マオタイ酒」のこと、投資の対象になっているチベット仏画のこと、そして、毒ギョーザ事件の犯人を生んだ貧困農村の実態などなど、確かに掘り下げ不足のテレビ映像では、知ることができなかったことが書かれていた。

◇「この南街村に、この中国に、どうしたらヤマギシズムの考えが根付くのだろうか」と思いながら中国を訪問し、知人友人もいるが、なかなか進展していない。
 親交が途絶えてしまった知人も何人もいる。
 民族的な意識の相違というか、建前と本音を使い分けることが常識的な人間関係に入り込めなかった微妙な感覚が、今も残っている。
 そんなことへの僕自身の力量不足というか、交流が進展しないことに対しての知人への後ろめたさに似た、少々、申し訳ないといった感情があるからか、中国情報の新刊が目に止まると、ついつい手にしてしまう。