季刊雑誌『プラン B』の終刊

 今日は、案内所の仕事始め、今年最初の「地域社会づくり研鑽会」。

 6日ぶりに案内所に行くと、郵便BOXに年賀状の束と、雑誌『プラン B』が入った封筒が届いていた。
             

 『プラン B』は、昨年3月に刊行した『ユートピアの模索・ヤマギシ会の到達点』と、昨年末に刊行した『農業が創る未来・ヤマギシズム農法から』を著した村岡到さんが編集している季刊雑誌だ。
 この『プラン B』が、今号で終刊となる知らせと、終刊にあたって何か書かないかという話を、昨年の10月に村岡さんからいただいた。
 僕は『プラン B』の短い期間の読者ではあったが、終刊に至ってしまったことに、残念に感じたので一文を書かせてもらった。
 一つの雑誌が終刊になると言うのは、ほんとうに残念な事である。
 そんな思いを込めて書かせてもらったので、季刊『プラン B』終刊号に載せていただいた文章を、僕自身の記録の意味でここにも記しておきたい。


●『プラン B』の終刊にあたって
 NPO法人日本針路研究所発行の『プラン B』が終刊になると、編集長の村岡さんからお知らせをいただいた。
 一つの定期刊行物が終刊するというのは、文化の種が一つ消えることだと常々思っている。ここ十年来、ファッションやグルメや旅の雑誌は別として、現代社会を見据えた考察を論じる場を提供していた総合雑誌を含めて、各分野の定期刊行物が少なくなっていることに危惧もしている。ネット社会の到来だから、紙媒体の刊行物の衰退は当然という人もいるが、それはそれとして、思想とまではいかなくとも、それぞれの考えを、考察過程を経て醸成し、それを気軽に論ずる場が多ければ多いほど、〝民度が高まる〟と、僕は思っている。
 だから、『プランB』終刊を知った今、正直、寂しい気持ちである。
 僕が『プランB』を知ったのは、編集長の村岡さんが初めてヤマギシ会を訪れ、興味を持っていただいてお付き合いを始めた昨年の4月からだから、読者としては日が浅い。しかし、村岡さんのご厚意によって、何冊かのバックナンバーもいただき、隅から隅までと目を通す読者ではなかったが、興味を感じた論文の何点かに出会えたことは確かである。
 今のこの寂しさを、何かに比喩するとしたら、とても俗的比喩になって失礼だが、食卓の上から常備菜の一つがなくなる気持ちというか、幼年時代に末っ子で育った僕が、長姉の嫁ぐ時に感じた寂しさというか、そんな気持ちに似ているのである。母は子供の僕たちに食することを強制するではなく、しかし家族の嗜好に配慮しながら、食卓には揃えておくものだという気持ちで置いてくれた常備菜。今ほど機械化されずに何から何まで手作業で多忙な農家にあっての長姉は、僕ら弟妹にとっては母親代わりの存在だった。短い読者ではあったが、村岡さんが編集していた『プランB』の存在を、その様に感じ始めていたと言ったら、村岡さんに失礼だろうか。
 こんな『プランB』終刊を前にしての僕の感傷的な羅列では、村岡さんに、さらに申し訳ないので、短い間の読者という免罪符をいただきながら、手元にある『プランB』の何冊かの印象に残っている論文を拾って振り返ってみたい。
◇『プランB』37号
 特集『脱原発運動の質的深化のために』は、福島県を故郷に持つ僕としては、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震による東京電力福島第一原子力発電所で発生した、炉心溶融など一連の放射性物質の放出を伴った原子力事故を、大きな衝撃と、原子力平和利用という名目で進められたエネルギー政策に対して〝無関心という関与〟で推進してしまっていた反省を感じていた時に出合った特集であった。故郷福島で起こった原発事故を、単に時の流れで風化してはならないと今でも強く思っている。
◇『プランB』40号
 特集『ウィリアム・モリスをどう捉えるか』を掲載しているこの号に出会えたことが、僕はとても嬉しく思っている。モリスがどのような社会主義を目指していたか、読み進めながらの感動を今でも思い出される。それは、僕の好きな宮沢賢治にも繋がり、そしてまた、我々が実践しようとしているヤマギシズムにも共鳴する思想の発見と驚き。僕にとって大きな知的収穫であった。
 付け加えて記しておきたいが、『ウィリアム・モリスマルクス主義』という経済学者・大内秀明先生(東北大学名誉教授)の本を村岡さんに紹介していただき、さらに、日本針路研究所が主催した『今、ウィリアム・モリスを考える』と題した大内先生の講演を拝聴する機会をいただいたことにも感謝したい。
◇『プランB』41号
 特集『資本主義の近代化が抹殺したもの』で取り上げた「伝統的信仰とオオカミの復活(上)」は、絶滅したオオカミの「復活」が日本の自然を救うと言っている丸山直樹先生(東京農工大学名誉教授)の論文だけあって、興味を持って読ませていただいた。因みに、この論文(下)は42号に掲載されていたので、これも楽しみに拝読したのは言うまでもない。
◇『プランB』42号
 特集『農業の未来を探る』で、「ヤマギシ会農業の特徴と意義」と題してヤマギシの循環農業の実践と実態を紹介していただいたことに、先ず感謝したい。ここで村岡さんは、ヤマギシ会の農業を、ソ連邦の集団農場「ソフホーズ」や「コルホーズ」がなぜ破綻したかの根本的原因に触れ、この破綻を突破する道がヤマギシ会の農業に可能性が高いのではないかと評価をいただいた。この事については、もう一度、我々自身が村岡さんの指摘されたことを認識し、農業経営の目指すべきあり方を再確認しなければならないと思っている。
 これ以外に、最後に記すとすれば、バックナンバーでいただいた『プランB』26号の特集『司馬遼太郎史観をどう見るか』も読み応えある論文集だった。
 やはり僕にとって、『プランB』終刊は、残念な出来事であることは確かだ。