『月下上海』という小説

 今日は帰宅途中で、やり残した仕事を思い出して、帰宅してからそれをやっていたらブログ記載文を書くテンションが低下してしまったので、僕の読書メモBoxから、ちょっと前に読んだ小説のことをアップする。
          

 9月の半ば頃の日曜日、テレビ東京で放映していた「ソロモン流」という番組を観た。 そこで特集されていたのが、松本清張賞をもらった山口恵以子という作家だった。
 僕はそれまで山口恵以子という作家を、あまり知らなかったし、小説も読んだことがなかった。
 ちょっと山口さんには失礼だが「へえぇ〜、このおばさんが松本清張賞か・・・」と観ていたら、
 「もらった賞金(500万円)は全部飲みます。」と公言して、同僚や同級生、家族と高級レストランや高級中華料理店で、食べて飲んで「これが至福」と満足している。
 「変わった作家だなあ〜」と思って、ついつい最後まで観てしまった。
 その松本清張賞の作品は『月下上海』という小説なのだが、山口恵以子という作家そのものが、テレビを観てから、ずっと気になっていた。
 番組で紹介されていた経歴によると、
 早稲田大学文学部を卒業した後、派遣会社に登録して働いたり、シナリオライターの勉強をして、2時間ドラマのプロットライターをやったりしている。
 そして現在は、丸の内新聞事業協同組合の社員食堂で料理を作り、そこの現場責任者なのだ。
 「苦節25年。今の仕事で安定した収入があるから書ける。仕事は辞める気はない。松本清張賞は1年で旬でなくなる。マスコミから声がかかったら何でも出る。本が売れたら嬉しいから・・・」
 こんな趣旨のことを堂々と言っていた。
 先週、書店に寄ったら、平積みされている新刊の中に、ちょっと変わった表紙装画の『月下上海』が目にとまった。
           

 物語は戦時中。
 主人公は、スキャンダルを逆手にとり人気画家にのしあがった財閥令嬢。
 戦時統制下の日本を離れ、上海に渡り、美貌と金の力をフルに使って、上海のバンド(外灘)を舞台に、そこで出会う4人の男たちと繰り広げられる物語。
 さすが、プロットライターの経験がある山口さんだ。
 プロットライターというのは、ドラマや映画などで脚本家が脚本を書く前に、ある程度、シーン展開やストーリーを固めて台本を作る仕事なのだそうだが、この小説も物語の展開が実に面白い。きっと近いうちに誰かが映画化するだろう。
 因みに、
 番組の中で山口さんが言っていたことを思い出したのだが、
 プロットライターという仕事は、原稿用紙300枚くらいを書いて3万円くらいの報酬なのだそうだ。それも必ず採用されるとは限らない。デレクターには注文を付けられる。そんな職業なのだそうだ。
 山口恵以子という作家。
 こんな生活力がある、変わったキャラの作家が書いた『月下上海』。
 興味があったら読んでみるのをお勧めする。