喜多川泰著 『「また、必ず会おう」と誰もが言った。』

 僕は時々、ブログに僕が読んで感動した本の事を書く。
 そして、それを読んだ人から「読んだよ」とか「貸してよ」と声を掛けられることがある。
 そんなことで「この人も実は読書愛好家だったんだ」と知ることができ、自分の読んだ本を互いに貸し借りをする仲間が増えている。
 それが僕にとっては、大きな刺激と、感動をもたらしている。
 自分の感覚では、手にすることがないだろうと思う本に出会って、思わぬ感動を得ることができるからだ。
 先週も、三重に出張した時に、そんな仲間の一人、豊里実顕地のエイコさんが貸してくれた本が、喜多川泰の『「また、必ず会おう」と誰もが言った。』という本だ。
           
 この著者の喜多川泰という作家が書いた本を僕は読んだことがなかったし、知らなかった。
 今日の日曜日、久々の雨で早朝散歩ができなかったので、どんな内容なのかなと思いながら読み出したら、なんと、一気に読ませてくれる内容だった。
 一見、高校生向けの人生教訓のような内容ではあるが、それは不思議と「生きるとは何か」ということを、僕たち大人(シニア)にも十分に考えさせられるもので、そこに出てくる人たちの温かい心や、本音を言えない歯がゆい親子関係など、物語の展開のところどころで涙腺がゆるむ感動の本である。
             
 物語は
 主人公の若者は熊本県の17歳の高校生。
 級友にひょんなことからウソをついてしまい、それを取りつくろうと日帰りで東京に来る。
 ところが、渋滞に巻き込まれて最終便の飛行機に乗り遅れてしまう。
 所持金もない彼が途方に暮れていると、お土産売り場の女性に声をかけられる。
 そこから物語は始まる。
 東京から熊本までの一人旅。いろいろな大人に出会う。
 美容師、警察官、トラックの運転手、医者、老人などなど…。
 これら出会った大人が語る、それぞれの人生と、そこで気づいたことの言葉一つ一つに、主人公の高校生は「生きる力」を学ぶ。
             
             
 例えば、大人たちは、こんな言葉を若者に語るのだ。

・「あなたにとって居心地のいい場所は、まわりの人があなたに何をしてくれるかによってじゃなくて、あなたがまわりの人のために何をするかによって決まるの。家も、学校も、職場も、全部同じね。そんなこと考えなくても、あなたがそこそこ幸せだったのは、あなたの家には、たとえあなたがどんな態度をとってもそれを毎日やってくれる人がいるからよ」
・「人間はね、いや、人間だけと言ってもいい、誰かの喜ぶ顔を観るために、自分のすべてを投げ出すことができるんだ。人間は人が喜ぶことをしたときに、自分も同じ喜びを得ることができるんだ」
・「私は三三歳にして初めて気がついたんだ。人間は、誰かの役に立つ生き方に専念したとき、それによって得られる報酬に関係なく、幸せを感じることができるんだということにね」
・「自分にとって都合がいい結果になったときに成功だって思っているよね。そして、自分にとって都合が悪い結果になったときに失敗したって。あらゆることに対してみんな自分の都合のいい結果になることを成功だと思っている」
・「使命とは限りある命を、永遠に続く何かに変えたいと願う行為じゃと私は思う」


 こんな言葉が、随所に出てきて、それが鼻に付くことなく、むしろ、立ち止まって考えさせられるから不思議だ。
 この喜多川泰著『「また、必ず会おう」と誰もが言った。』も、お薦めの一冊である。
 この本、映画化されて9月末には公開だそうだ。その前に一読を。