根本伸夫著『先生って何だ! 〜子どもたちよ、自分を大事にしろ!〜』(文芸社)

 知人の著者・根本さんとは、もう10数年お会いしていない。
 その根本さんが、教師を辞められてから本を出したと、妻の知人を経由して、5月15日に刊行された新刊が回ってきた。
          

 内容は、横浜市内の荒れた中学校を正常化するための教師たちの奮闘の物語だ。
 その中で、「先生って何だ」と問いかけつつ、不良生徒から逃げないで、生徒への愛情を持って、3年で教室に鍵をかける必要のない学校にすると言う目的を持ち、周りの教師を巻き込み、共にそれをやり遂げる。
 そして、物語を通して、今、社会問題となっている〝いじめ〟や〝体罰〟について、教師の立場から論じている。

 根本さんは、あとがきで、
 「この中学年代を〝どう生きてきたか〟が、将来の人間形成に大きく影響すると言っても過言ではない」といい、「信頼できる、頼りになる、いざとなったら味方になってくれる、自分を理解してくれるという〝ひと〟が一人でも存在すること」が大切だといい、「その味方になってくれる〝ひと〟は、友達でも先生でも親でも、一人でもいればよい。中学生が、教師を含めたその〝ひと〟一人を、見つけ出すように援助していくのが、教師の大きな仕事であると考える。なぜなら、ひとは誰でも孤立無援ほど悲しく、寂しく、切ないものはなく、自己の存在を見失ってしまうから。」と書いている。
 そして、ツッパリやいじめの原因の根幹に「自分が〝認められていない、居場所が見つからない〟」という不安やストレスがあると書いている。

 教師という職業に信念を持ち、どんな生徒をも避けることなく、正面から接して、日々取り組んだ根本さんの教師時代の姿勢に称賛を送り、教師という職業を愛し定年退職された根本さんに、ご苦労様と言いたくなる著書である。