新堂冬樹著・文庫『 紙のピアノ 』を読む

 恩田陸さんの小説蜜蜂と遠雷の感想ブログを読んだ友人から、クラッシック音楽のピアノ演奏の世界を描いている小説として、この新堂冬樹さんの『 紙のピアノ 』を紹介された。早速、書店に寄って探してみたら文庫化されたばかりで並んでいた。
 そんなことで、『 蜜蜂と遠雷 』の余韻を引きずりながら、恩田陸さんの音楽の世界の表現と比較しながら読み進めてしまった。

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 母子家庭という貧しさゆえに、いじめられっ子で育つ主人公の少女。
 ある日、そのいじめから救ってくれた町のピアノ教師。
 ピアノ教室の窓から聞こえるピアノの音に合わせて指を動かす少女に、音楽的才能を見抜き、スケッチブックの紙に描いた鍵盤を渡す。
 少女は知らないが、かっては母親もピアニストで、子どもが産まれ、夫を事故で失い、ピアニストの夢を絶ちきっている。
 そんな母親の血を引く少女は、町のピアノ教師の献身的な指導を受けて、音楽大学に入り、プロのピアニストを目指しピアノコンクールに挑む。
 自分をいじめから救ってくれて、生きる希望を与えてくれた恩師に恋心も抱きながら、コンクールで優勝し、恩師の夢と自分の夢を叶えるために、ピアノスキルを高めていく日々。

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 そんな、ピアノに魅せられ、夢を叶えるためにスキルアップの葛藤を繰り返しながら、プロを目指すた少女の物語なのだが、そこに登場する演奏者がピアノを奏でるクラッシック音楽の音の世界。それのイメージ描写は読み応えがある。
 ピアノコンクールには、次々と天才と呼ばれる強力なライバルが現れる。
 ピアノの才能があり、その世界で切磋琢磨しながらプロを目指して生きる登場人物一人一人を個性豊かに描き、ある人物に対しては、意地悪な言動や敵意丸出しの人物に描きながらも、最後は悪人にしないで、その人物の個性として描いて、読者を安心させる。


 ピアノコンクールで競い合う世界がどんなものか、僕には疎いが、物語としてのその展開に引き込まれてしまった。