ドキュメンタリー映画『阿賀に生きる』

 案内所の女性たちの話題になっていて、次々と観に行っているドキュメンタリー映画阿賀に生きる』のアンコール上映は今日が最終日。
 機関紙「けんさん」2月号の編集も一段落したので、僕も渋谷のユーロスペースに観に出かけた。
              
 この映画は1992年につくられたというから20年前のドキュメンタリー映画なのだ。
 映画の主役は3組の老夫婦。みな70代から80代。
 かつては鮭漁の名人で小さな田んぼで米作り続ける老夫婦。200隻以上の川舟を造ってきた舟大工の老夫婦。若いときは東京の餅屋に勤めていたという餅つき名人で、近所からも頼まれて一度に1表近くの餅をつく老夫婦。
 これら老夫婦と周りの村人たちの日常を、3年にわたりカメラが追いながら記録し、さらに新潟水俣病の問題もテーマとして扱っているドキュメンタリーだった。
 僕は、新潟水俣病については、聞いたことはあるが忘れていて、あまり知識がなかった。
 熊本の水俣病は、チッソ会社が有毒な工場廃水を不知火海にたれ流し、環境汚染と食物連鎖で引き起こされた人類史上最大の公害事件と言われているが、新潟の水俣病は、昭和電工阿賀野川に廃液を流し続けて引き起こしたものだというのを思い出した。
 この映画は、阿賀野川沿いの小さな田圃で米を作り、川で魚を捕り、自然の恩恵を受けて生きてきた阿賀の人々が、被害を受けながらも、それでも変わらず川とともに生きている姿を撮影している。
 水俣病という問題を見つめてはいるが、単なる反公害闘争の記録映画ではない。
 昭和の時代を、自然の恵みをベースに、貧しくともこころ豊かに、自然を受け入れながら生きた人達の記録映画なのだ。
 そこに、このドキュメンタリーの素晴らしさがある。
 生きるとは・・、人間の力強さとは・・、そんな事を考えさせる映画だ。
 そして、僕は福島の農村の生まれなのだが、この映画に出てくる老夫婦の姿に、遠い記憶に残る亡き両親の姿がダブってしまった。
 20年も経った今でも、上映されるだけあるドキュメンタリー映画の〝傑作〟であることは間違いない。