知人のテレビディレクター・Nさんが、認知症となった母を撮影し続けたドキュメンタリー映画 『 ぼけますから、よろしくお願いします。 』 の試写会案内が届いたので、先週、渋谷の映画学校試写室に行って観てきた。
Nさんは、広島県呉市の生まれ。
18歳で東大進学のために上京以来、両親が住んでいる故郷を離れて、東京で暮らしている。
現在はドキュメンタリー番組を制作するテレビディレクター。
Nさんは、数々のドキュメンタリー番組を手がけるが、特に話題になったのが、Nさん自身が、４５歳のときに乳がんを患い、その闘病をドキュメンタリー番組 『 おっぱいと東京タワー 』としてまとめ、優れた放送番組に贈られるギャラクシー賞やニューヨークフェスティバル賞などを受賞したドキュメンタリーだ。
Nさんには、呉市に住む現在９５歳のお父さんと、８７歳になるお母さんいる。
そのお母さんに変化が現れたのが２０１３年ごろ。
翌年の２０１４年に病院に行ったら、アルツハイマー型認知症と診断される。
それ以降、認知症が進むお母さんと、耳が遠くなったお父さんの献身的な介護の様子を、実家に戻って自分が両親の介護をするべきかと悩みながら、帰省するたびにカメラに両親の暮らしを撮り続ける。
それは、テレビ・Mr.サンデーで２度にわたり放送された。
さらに、昨年秋、BSフジで『 ぼけますから よろしくお願いします。〜私が撮った母の認知症１２００日〜』として放送され、大反響。
今回は、それに追加取材し、再編集されて、映画化された。
１０２分のドキュメンタリー映画。
認知症が進行していく中でのお母さんの葛藤。
９０歳を越して耳の遠くなった、家事などしたことのないお父さんが、妻の状態を受け入れて、お世話する。
帰ってこようかと言う娘に「おれが母さんの面倒はできるから」と言って、日々、買い物をして、食事を作って、コーヒーを淹れて、お世話する。
そんな典型的な老老介護の実態。
それを、娘がカメラでとらえ続けた２人の暮らしの映像に、言葉では表現できないような、ズシンとくる感動を覚え、老いとは何か、長年共に暮らしてきた夫婦の愛や絆、思いやり・・・、いろいろな事を考えさせられるドキュメンタリー映画だった。
そして、肉親を冷静にカメラで記録し続けたNさんの、精神的強さに驚く作品となっていて、Nさんだからこそ出来たドキュメンタリー映画だなあと思った。
認知症が身近な社会問題となっている今、公開は１１月だが、ぜひ、多くの人に観てもらいたい映画だ。
ちなみに、この映画のプロデューサーは、大島渚・小山明子夫妻の息子さんの大島新さんだ。
