ウィリアム・モリスについての新書

 村岡到さんから、大内秀明著『ウィリアム・モリスマルクス主義という本をいただいた。
          
 恥ずかしながら、モリスについての思想書など読んだことがない。社会主義の本なども最近手にすることがない。
 しかし、村岡さんの薦めだから、何かあるだろうと読み始める。
 序章に、
 ─ 冷戦下の日本では、マルクス・レーニン主義だけが社会主義であり、ソ連こそ社会主義の祖国だと、教え込まれてきました。・・・社会主義ソ連と教え込まれてきた戦後日本の非常識が・・・ ─ と書いてあった。
 確かにそうだ。僕の乏しい社会主義知識でもそうなっている。
 その後に、著者は 
 ─ モリスがマルクスの「資本論」から学んだ社会主義は、それはマルクス・レーニン主義社会主義とは、まったくと言っていいほど違います。彼の社会主義は、エンゲルスなどから「センチメンタルなユートピア社会主義」と冷たくあしらわれましたが、しかしそれは「資本論」の科学を踏まえ、友愛と連帯と協同をもとにした正統的な〈コミュニティ社会主義〉〈共同体社会主義〉なのです。そして、生活を豊かにするために芸術をとり込む〈芸術社会主義〉でもありました。その考えを訴えて21世紀、さらに22世紀に夢を託したのが彼の代表作「ユートピアだより」です。─ と書かれている。
 僕はこれを読んで、興味が湧き、それ以降のページをめくることにする。
          
 読んでみての感想は、一口で言うと、
 社会主義という考えと、その歴史的流れを、乏しい知識で漠然と捉えていたが、この本を読んで、私なりに乏しい知識ながらも再構築した感じがする。
    第1章 モリスとアーツ&クラフツ運動
    第2章 モリスとマルクス、エンゲレス
    第3章 モリスの社会主義
    第4章 現代に甦るモリスの〈共同体社会主義〉 
 この4章からなるのだが、
 僕は特に、第3章以降は、新鮮な刺激を受けて一気読みに近かった。
 モリスが「ユートピアだより」で何が言いたかったか、モリスの言う「共同体社会主義」とは何か、それらを分かり易く解説されていて、とても勉強になった。
 意識する、しない、は別にして、ヤマギシズムという考え方でやってきた(やろうとしている)私たちに、共通する部分が多いことにも驚いた。
 そして、第4章での現代社会の分析、モリスの思想が宮沢賢治イーハトーブの世界に繋がるという分かり易い説明。
 ここまで読むと、著者が序章のタイトルにした「いま、なぜウィリアム・モリスなのか」が納得できる。
 東日本大震災原発事故以降、自分の生き方に問い直しを感じている人には、一読に値する新書だと思う。

 ちなみに、
 この本の著者・大内秀明氏の『今、ウィリアム・モリスを考える』という講演会が、1月26日(土)午後に文京区民センターである。
 もちろん、村岡さんからお誘いを受けているので、行ってみようと思う。