介護事業を通して地域社会をつくる会員・Sさん

 会員・Sさんは、北海道日高郡新ひだか町(人口約26000人)で介護事業を経営している。
 Sさんはこの町で「認知症高齢者グループホーム」、まだ24時間介護に頼らなくても共同生活なら自立した生活ができる高齢者が入る「共同生活支援ハウス」、自宅からデーサービスとして通ってくる「認知症対応型通所介護施設」、高齢者の「独居ハウス」や「ペアハウス」での支援、在宅高齢者への「訪問介護サービス」などを複合的に行っている。
 さらに地域の在宅高齢者への「食事提供」、介護を必要とする高齢者と同居する家族に用事がある時など職員が泊まりに行く「逆ショートスティ」なども行い、認知症高齢者が「住み慣れた地域で暮らしたい」という要望に応えられる地域社会づくりを実践している。
 そのSさんから、毎朝、「ケアセンターだより」がFAXで送られてくる。
 
 一昨年の暮れに会の機関紙「けんさん」の取材のために訪れた時知ったのだが、彼は毎朝4時に起きて「たより」を書いて支援者などにFAX送信をしていると言う。日々の出来事、Sさんの行政に対する意見、地域の人たちとの交流などなど。時々、競馬産地在住だからか中央競馬の結果なども書かれているから笑ってしまう。
 そんなSさんは「グループホームが終の住み処ではない。お年寄りはみんな自立したい、出来ることなら自宅で終を迎えたいと思っている。それを目指した助け合いの出来る地域社会を創ることが最終目的だ。自分がやっていることが地域社会に受け入れられて、町全体に溶け込んでいったら、ヤマギシ会が掲げている全ての人が幸せに暮らせる社会が実現するのではないかと思う」と、持ち前のパワーで熱く語る。
 Sさんは約30年間畜産業を営んだ農業人だ。大学を卒業後、ホクレンの研修生として1年間渡米して酪農を学んだこともあるらしい。また過疎化する町を何とかしたいと、様々な地域活動をして町議会議員も勤めた人だ。
 そんなSさんが「人生後半の夢のチャレンジ」として異業種の介護の世界に入ったのは約12年前の46歳の時という。
 今朝の「たより」には、こんな事が書かれていた。
−−ここ4年間だけでもグループホームと支援ハウスで暮らした人達26人の看取りを経験し、その内の15人は葬儀まで行った。「死」とは何かを考えさせられる。幸せな死への証人でありたい。−−
 Sさんのような地域に根ざした実践をしている会員がいることを誇りに思う。