鈴木荘一著『明治維新の正体』を読む

 この本は、新聞の新刊広告で知った。
 以前に原田伊織氏が書いた『明治維新という過ち』を読んでいたので、もう少し、幕末から明治に至る日本近代の始まりについて、本当はどうなのかという好奇心から、この書籍に興味を持った。
 題名は『明治維新の正体―徳川慶喜の魁、西郷隆盛のテロ』
         
 この書籍説明をネットで見ると「出版社からのコメント」には次のように記されている。
《「日本近代史の誤りを正す」という信念のもと、元銀行マンならではの緻密さと分析力をもって記された氏の数々の著作は、『昭和史』の半藤一利氏や『明治維新という過ち』の原田伊織氏といった人気歴史作家や、評論家の西部邁氏や元大蔵官僚の榊原英資氏から高い評価を受けています。本書で著者は、「私たちが教えられてきた幕末維新史は勝者(薩長)に都合よく書かれたもの」と断定し、敗者(幕府)の功績を丹念に掘り起こしていきます。しかしながら決して敗者側一辺倒になることのない著者の冷静・公平な視座は独特で、その意味で本書は、これまでにない「幕末維新観」を提示する1冊と言えます。》

 確かに、ペリー来航の背景や、当時の諸外国の力関係から始まって、その後の尊皇攘夷と開国のせめぎ合いにおける幕府、公家、水戸藩薩長などの動きと、大政奉還までの経緯を、緻密に分析をしながら語られてる。
 そして何よりも興味をそそるのは、最後の将軍・徳川慶喜や、明治維新の英雄とされている坂本龍馬西郷隆盛について、その人物像を冷静に分析し考察している点である。
 徳川慶喜大政奉還で目指したのは、イギリス型議会制度の導入であったり、それを理解せず、武力倒幕を画策実行した西郷隆盛など、いままで語られ、僕たちがイメージしている人物像とはかなりの違いに戸惑いながらも、目から鱗的興味が最後まで読ませる。