今回の芥川賞受賞作『異類婚姻譚』

◇『異類婚姻譚(いるいこんいんたん)』
 文藝春秋3月号に、第154回芥川賞の2作品が掲載されている。
 そのうちのひとつ、本谷有希子さんの『異類婚姻譚を読んでみた。
        
 著者の本谷さんは、劇作家であり、小説家だ。現在は主婦で子育てもしているが、演出家でもあり、女優、声優でもあるし、「劇団・本谷有希子」も主宰している。
 今回の受賞作の内容は、専業主婦の主人公が、無意識のうちに夫婦が同化していくことへの違和感というか、生まれも育ちも違う2人の個性が、一緒に暮らすうちに、楽な方に流されていく、怠惰な生活を送ることのなかでうやむやになっていく、その様子を「人間の業」としてテーマに据え描いている。

 物語の出だしはこうだ。
「ある日、自分の顔が旦那の顔とそっくりになっていることに気が付いた。
 誰に言われたのでもない。偶然、パソコンに溜まった写真を整理していて、ふと、そう思ったのである。まだ結婚していなかった五年前と、ここ最近の写真を見比べて、なんとなくそう感じただけで、どこがどういうふうにと説明できるほどでもない。が、見れば見るほど旦那が私に、私が旦那に近付いているようで、なんだか薄気味悪かった。」
 このように始まり、読者としての僕を捕らえ、最後まで読ませた。

 芥川賞選者の山田詠美さんは、選評で「少なからぬ既婚者の背筋を寒くさせたであろう、夫婦あるあるエピソードの数々。(中略)何とも言えないおかしみと薄気味悪さと静かな哀しみのようなものが小説を魅力的にまとめ上げている。」と書いている。
 確かに、夫婦とは何だろうか、どんな性(さが)のつながりなのだろうか、それがいい意味での一体化なのか、惰性的日常の同化なのか、などなど、読後に残ってしまう作品である。



◇今日のPhoto
 腕時計のベルトが壊れたので、帰宅時に新宿駅で降りて高島屋新宿店の中にあるメーカー専門店に寄った。
 その帰りに、線路高架橋上から写した新宿駅上空の夜景。
     
     


 新宿駅南口にあった「ルミネ広告」
 ルミネ広告のキャッチコピーは、いつもドキリと僕を惹きつける。
     
 『幸せだけ 女って上手に 隠せない』 なんだ、これは!
 「う〜ん・・・」と、唸らせるキャッチコピーだ。