三上延の『ビブリア古書堂の事件手帖』を読む

 オーストラリア出張から帰国したあと、会の機関紙「けんさん」の編集や、三重県ヤマギシの村への出張、栃木県の大田原農場へ出掛けたりと、ちょっと慌ただしく暮らしていたら、今週になって、疲れもちょっと溜まったのか風邪気味になったり、無性に本が読みたくなったり・・・。(ブログもここ3日ほどは書いていない)
 僕自身の内部で、身体的にも、精神的にも、バランス修正の欲求が働いている。
 そんな僕自身の内部の欲求に掻き立てられて、今週の火曜日の夕方に書店に寄り買った本が、三上延ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち』(文庫本)だ。

 この本は昨年春に出版されて以来、TVでも取り上げられたり、書店の売れ筋文庫として話題の本だというのは知っていた。
 その上、今回は2012年本屋大賞ノミネート作品とポップが付いて、店頭に平積みされている。
 三上延の作品はまだ読んだことがないが、本屋大賞ノミネートにもなって、もう20版の発行ということは、かなり読まれているのだろう。まあ、気分転換に読んでみようかと思ってページをめくる。
       

 『鎌倉の片隅でひっそりと営業をしている古本屋「ビブリア古書堂」。そこの店主は古本屋のイメージに合わない若くきれいな女性だ。残念なのは、初対面の人間とは口もきけない人見知り。接客業を営む者として心配になる女性だった。だが、古書の知識は並大低ではない。人に対してと真逆に、本には人一倍の情熱を燃やす彼女のもとには、いわくつきの古書が持ち込まれることも、彼女は古書にまつわる謎と秘密を、まるで見てきたかのように解き明かしていく。これは“古書と秘密”の物語。』(裏表紙より転載)

◇実に面白かった。
 古本にまつわる謎解きに、ついつい引きずり込まれてしまった。
 北鎌倉の「ビブリア古書堂」という古本屋を舞台とした古書4つにまつわる物語なのだ。
 極端に内気で、本以外の話になると人と目を合わせることもできないくらい、人づきあいが苦手な、〝栞子さん〟という若くてきれいな女性が、それぞれの古書にまつわる謎を解くのだが、単なる謎解きに終わらず、古書についての〝うんちく〟が随所に出てくるのも興味が湧く。
 気分転換に、読み進めるにはもってこいの本だった。

 そして、ここに取り上げられている4つの古書は、「漱石全集・新書版」(岩波書店)、小山清著「落穂拾ひ・聖アンデルセン」(新潮文庫)、ヴィノグラードフ・クジミン「論理学入門」(青木文庫)、太宰治著「晩年」(砂子屋書房)なのだが、これらの内容も気になり、機会があれば一度は読んでみたくなるほどだ。
 さらに続編『ビブリア古書堂の事件手帖2−栞子さんと謎めく日常』も出版されているらしい。この際、一気に読んでみようかと迷っている。