金子達さんの朗読劇『百万年の後悔』

 昨日の天気予報通り、朝起きたら雪。
 我が家・多摩実顕地の屋上から眺める街並みも雪景色。
         

 案内所がある高田馬場も、今日は午後3時過ぎまで雪だった。
         

◇午後1時から、案内所の研鑽室を会場にして、
 俳優・金子達さんが演じる朗読劇『百万年の後悔』をやる。
 金子さんは、一昨年春にも、核の恐ろしさを描いたイギリスの絵本「風が吹くとき」を劇場演劇にプロデュースし、大赤字覚悟で池袋の劇場で自らが演じた俳優だ。
 今回は、原発事故以降に話題になっている原子力発電所の現場で20年間働いていたプラント配管技能士の平井憲夫さん(1997年に逝去)が書いた「原発がどんなものか知ってほしい」という文章をもとにした朗読劇で、全国を巡ろうと計画している。
 金子さんからこの話を聞いたサユリさんが、自分自身が原発について無知だった事、無関心だった事に気づき「私たちの無知や無関心が、結果的に原発事故になった。まず私たちが金子さんの朗読劇を聞いてみよう」と企画したのだ。
         

 この企画に、雪という悪天候の中を、37〜38人の人たちが来てくれた。
 平井憲夫さんの「原発がどんなものか知ってほしい」は3人で演じる朗読劇。
         
         

 後半は、広島で27歳の時に被爆した医師・肥田舜太郎さんの証言「あなたは、内部被ばくのことを知ってますか」というもの。こちらは金子さん1人での朗読だ。
         

◇この「原発がどんなものか知ってほしい」を少し説明すると、
 原発は安全な夢のエネルギーとして作られているが、現実的には、原発に携わっている人(原発現場の労働者も含めて)の多くが、原子力放射能、さらには原発そのものの構造的なものも含めて、いかに無知であるか。
 そんな状態で施工し運転されている原発を、福島原発事故以前から平井さんは警告し、各地で講演活動などをして危険性を指摘していた。
 僕は、金子さんから紹介されて原作となった平井憲夫さんの文章も読んでいるし、案内所の研鑽室でやった脚本作り段階の稽古でも一度聞いていたし、さらに2ヶ月ほど前に田無市でやった公演にも行ったので朗読劇の内容は知っていたが、今日の金子さんの演技は、その時よりも数段に進化していて、内容的にも伝いたい場面を絞り、演技的にも十分に、熱い思いが伝わるものに変わっていた。
 肥田舜太郎さんの証言「あなたは、内部被ばくのことを知ってますか」の朗読も、実際に被曝経験者だから知っていること、その中で医師として治療に携わったから言える、迫力のある、胸に迫る、何人かの人は目頭を押さえるほどの内容だった。
◇今日のこの朗読劇には、雪の中を、静岡からスギモトさん夫妻など3人が来てくれたし、忙しい中をカトウさん夫妻も来てくれた。懐かしい顔の人も何人か来てくれて、それぞれが考え、何かを感じることが出来た朗読劇だったと思う。
 それにしても、一年前に福島原発事故が起こって、それまではあまり注目されなかった原発の危険性を指摘した平井さん。一躍それが、今、脚光を浴びるというのが皮肉である。そのことを、今、僕たちは反省し、悲しむべきことだと思う。

◇以前のブログにも書いたが、金子さんは、時々、声優で出演したり、TVなどの脇役では見かけるが、有名な名の通った俳優ではない。
 今年で68歳。俳優業をやりながらの郵便局アルバイトも、昨年末は高齢で再契約されなかったらしい。生活費を切り詰めながらも「いま、自分がやらなければ悔いが残る」と社会に訴えようとする金子さん。その熱い心と生き方が凄いと思う。
 金子さんのふるさと・北海道からも声がかかってきたと、喜んでいた。