演劇『 hana―1970、コザが燃えた日― 』を観る

 今月末、僕は誕生日。
 妻と「たまには2人で出かけて、食事でもしようよ!」と話していたが、特に行ってみたいお店もないし、特に食べたいと思っているのもないし・・・と意見が一致せず1週間が過ぎてしまった。
 そして、突然に妻が提案してきたのが、演劇『 hana―1970、コザが燃えた日― 』の観劇だ。
 僕も以前に、新聞記事を読んで気になっていたことを思い出して・・・。
 早速、チケットぴあで検索して、東京での公演最終日の残り少ない昨日のチケットをゲット。
 場所は、池袋の東京藝術劇場プレイハウス。

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 今年は、沖縄の本土復帰から50年経過した年。
 復帰2年前の1970(昭和45)年12月20日(日)。米軍嘉手納基地の近くの繁華街・コザで起きた、住民が米軍への怒りを爆発させたコザ騒動の当日深夜、米兵相手のバー「hana」の店内が、この演劇の舞台設定。
 「鉄の暴風雨」と言われた米軍の猛烈な艦砲射撃を受け、過酷な戦場となった沖縄は、当時の沖縄人口の4分の1にあたる約15万人が犠牲となって亡くなった。
 そして、焦土化した沖縄の地は、米軍の極東軍事基地となり、朝鮮戦争ベトナム戦争の拠点となって、米軍統治が1972年まで続く。

 そんな中での「コザ騒動」とは、一体何だったのかと問う内容なのだが、直接的には騒動の内容ではなく、そこに生きた沖縄の人達の不条理な状況と生き様を、一夜の物語として濃厚に語る内容だった。

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 作者は畑澤聖悟さん、演出の栗山民也さん。
 出演は松山ケンイチさんや余貴美子さんなど。


 コザ騒動が起こった深夜。
 コザ市ゲート通りにある米兵相手のバウンショップ(質屋)兼バー「hana」では、看板の灯が落ちた店内で、おかあ(余 貴美子)、娘のナナコ、おかあのヒモのジラースーが三線を弾きながら歌っている。そこへ、アシバー(ヤクザ)となり家に寄り付かなくなった息子のハルオ(松山ケンイチ)が突然現れる。
 おかあが匿っていた米兵を見つけ、揉めていると、「毒ガス即時完全撤去を要求する県民大会」帰りの教員たちが客としてやってくる。その中には、息子のアキオ(岡山天音)もいた。
 この数年、顔を合わせることを避けていた息子たちと母親がそろった夜。ゲート通りでは歴史的な事件「コザ騒動」が起る。
 ハルオとアキオは戦争孤児。アキオよりも年嵩の男の子だったからハルオと名付けて、おかあは米兵との間に生まれたナナコを3人兄妹として育てる。
 密貿易をするジラースーの世話になりながら、生きるために結びついた血のつながらない、いびつな家族。
 アキオ達と一緒に来た本土の報道カメラマンの無邪気な問いに答えながら、米軍に支配される不条理の中での日常が語られ、家族の秘密と事実を明らかにしながら、そこに生きる沖縄の人達の実態と人間模様をも描き、今も続く沖縄の問題を問いかける。


 今年、「沖縄復帰50周年記念式典」が計画されている。それを前に、大きなテーマを観客に投げかける見応えのある内容だった。