文庫2冊のおしゃべり

◇『 八日目の蝉 』を読む
 この角田光代さんの『 八日目の蝉 』は、テレビドラマにもなり映画化もされた話題の小説だから、おおよその物語の展開は知っていたので、原作となった小説は読んでいなかった。
 最近、続けざまに2人の人と、この小説が話題となった。
 そんなことで、改めて角田光代著『 八日目の蝉 』を読んだ。
       
 内容は、「母性」をテーマにしたもので、不倫相手の子供を誘拐した女が、その子を育てながら3年半の逃亡の日々と、誘惑された子供が大学生になってからの葛藤を描いたものだ。
 解説で、池澤夏樹さんは「この小説を読むに際して、まずは育児が快楽であることを再確認しておこう。」と書いているように、幼児誘惑というサスペンス調の物語ではあるが、女性にとって出生とは、母親としての愛情とは、家族とは何かなどの日常的な要素が、深く深く掘り下げられた読み応えのある小説だった。


◇『 奇跡の人 』を読み始める
 僕が好きな作家・原田マハさんの『 奇跡の人 』が、最近、文庫化されたことを新聞書籍広告で知った。
 早速、購入。
       
 この物語は、三重苦の障害を克服したヘレン・ケラー物語の日本版であるという。
 そんなことで、ヘレン・ケラーは「介良(けら)れん」として、アン・サリヴァンは「去場安(さりばあん)」で登場し、物語の舞台は明治の津軽なのだが、2人の出会いは1887年(明治20年)の春と、時を同じく設定している。
 原田マハが、どんな試みで、ヘレン・ケラー物語を日本版に描いたのか。
 そこが楽しみで、読み出した。