◇僕は柿が大好きだ
子どもの頃、僕の母は「秋に柿をいっぱい食べていたら、冬は風邪を引かない。」と言っていた。
そうなのかどうかは、定かではないが、僕は今でもそう思って、秋には柿をよく食べる。
母だって、確たる根拠があって言っていたとは思えないが、柿にはビタミンAやCが豊富だというから、あながち出任せではないのだろうと思っている。
実家の庭先には柿の木があって、柿はいつも食べ放題だった。というより、お金を出して買うおやつなどに恵まれていなかったので、母はそれを口実に僕たち兄弟の空きっ腹を満たさせたのかも知れない。
就職して東京に出てきたとき、柿が店先に値段が付いて並んでいることに、僕は驚いた。
僕の田舎では、どの家にも柿の木があって、「柿もらうよ!」と一声かければ「木から落ちるなよ!」と、自由に取らせてくれた。売り物ではなかった。
◇富有柿
今日、高田馬場のさかえ通り商店街を歩いていたら、美味しそうな富有柿が一山7個500円が目にとまった。
興味を示した僕に、おじさんが「もう、柿も終わりだよ。他では正月にも売っているけど、高くなるよ。」と声をかけてくれた。
実は、このおじさんは、高田馬場界隈では知らない人はいないとも言われている「おじさん」なのだ。
お店の名前は「青果加藤商店」。1930年創業の老舗なのだ。
おじさんとこのお店は、時々、マスコミにも登場する。
◇ちょっと話し込んで
おじさんが勘定を済ませた僕に、突然話しかけてきた。
「おい、安倍さんには困ったなあ〜。プーチンと話して3000億だよ。3000万じゃないんだよ。」
「お墓参りが自由に行けるって言ったって、なあ〜」
そんな北方領土問題から始まってカジノ法案まで、5〜6分ほど政策談義というか立ち話。
◇「青果加藤商店」には
お店の入り口の壁に、手描きの「ビック15」というランキン表が貼ってある。
もちろん、おじさんの作だ。
「なんと言っても、競馬はキタサンブラックだよ。知ってる? 馬主は歌手の北島三郎のだよ。」と、ランキング1位に書かれている。
「最近じゃ、ピコ太郎には俺も負けるねぇ〜、3位に入れたよ。」
そして、お店の奥の壁には、マリリンモンローの大きな写真。
どう見たって、青果店にはアンマッチだが、それがまた、ここではいい雰囲気を醸し出しているから不思議だ。
こんなお店と、こんなおじさんがいるから、高田馬場は面白い。