原田マハさんの直木賞候補作を読み始める

 今月の11日から、上野の国立西洋美術館で設立60周年企画の「松方コレクション展」を開催している。

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 僕は、まだ鑑賞してないのだが、ぜひ観たいと思っている。
 僕が興味があるのは、国立西洋美術館の設立に繋がる「松方コレクション」の作品群もそうだが、特に、私財を投じて収集した西洋美術品は2千点とも3千点とも、さらに海外に流失した浮世絵の買い戻しも含めたら8千点とも1万点ともいわれる美術品収集家・松方幸次郎について興味がある。


 その松方幸次郎と松方コレクションを題材にした小説を、僕の好きな作家・原田マハさんが刊行したことを新聞の書籍広告で知って、国立西洋美術館に行く前に、先ずはそれを読みたいと思っていたが、「松方コレクション展」企画が9月末までの会期なので、まだ新刊を購入するまでには至っていなかった。
 ところが、今週発表された今期の直木賞候補の中に、この原田マハ著『美しき愚かものたちのタブロー』が入っているではないか。
 「やっぱり、急いで読もう」と思って、小遣いをやりくりして購入。

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 この題名も表紙絵も素敵だ。
 「タブロー」とは、絵画用語で、カンバスや画紙に描かれた絵を指しての言葉だが、「・・愚かものたち・・」というのも意味深い。


 早速、ページをめくって読み出したら、この物語の主要な登場人物らしい美術史家の田代雄一(実在のモデルは西洋美術史家の草分け矢代幸雄氏)の言葉を借りて、著者は松方幸次郎について次の様に描いている。
 ──その人の名は、松方幸次郎。
 芸術の泉の縁に佇んで、わしゃ絵なんぞわからん、と文句を言いながら、小石を投げ入れた。澄み渡った水面に広がる波紋をじっと眺めるうちに、今度は手をひたし、清らかな水をすくい上げてのどを潤した。ついにはざぶりと飛び込んだ。美しい泉は、最後には彼のものになった。
 こよなく絵画(タブロー)を愛した稀代のコレクター「MATYKATA」の名は、いっとき、パリじゅうに──いや、ヨーロッパ中に知れ渡った。
 彼が絵画を買い集めた理由はただひとつ。欧米に負けない美術館を日本に創り、そこにほんものの名画を展示して、日本の画家たち、ひては青少年の教育に役立てたいと願ったからだ。

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 やっぱり、国立西洋美術館の「松方コレクション展」を観る前に、『美しき愚かものたちのタブロー』を読み終えるのが正解のようだ。
 きっと、「松方コレクション展」鑑賞で、読まないで観るより何十倍もの何かを得ることができるだろう。