多摩実顕地にヨウヘイ君という若者がいる。
彼は、ヤマギシズム学園初等部と中等部で育った後、親元の多摩実顕地に戻って夜間高校で学び、卒業後はTデザイナー学院という専門学校に通っている。
彼が学んでいるのはアニメーション科。
昨年秋から、彼は卒業作品制作に取り組んでいた。時には徹夜を繰り返しながら制作に取り組んでいる姿を見かけた。
その彼の作品が、見事に優秀賞を受賞した。
最優秀賞1点・優秀賞1点・奨励賞数点ということだから、アニメーション科卒業生の中で2番目の出来映えということだ。
その「卒業制作優秀者のプレゼンテーション」が、水道橋にあるTデザイナー学院であるとヨウヘイ君が教えてくれたので出掛けてみた。
プレゼンテーションを堂々とするヨウヘイ君。
作品のタイトルが『ゴールインスタート』だ。
四季の中を少年が駈けて行き、成長して行く物語を4分に凝縮した作品だ。
僕はアニメのことは詳しくないが、なかなかの出来であると思った。絵も上手い。
さすが、優秀賞をゲットしただけの作品である。
指導教官のコメントもよかった。
「この作品は、映像としてもよく描かれた作品だ。彼は企画段階では内容をあまり語らなかったのだけれど、出来た作品はとても評価できるものだ。彼は変わった若者で、1ヵ月ほどブラジルにボランティアに行くとか、卒業制作中も一週間アジアを旅してくるとか、そんな若者で、卒業した後もすぐには業界に入らないで海外に行くと言っている。すぐに就職しなくても十分に業界でやれるとみている。」
こんな評価をしていた。
確かに彼は、夏休みなど、オーストラリアにも行ったし、昨年はブラジルの鶏舎建設にも行った。
海外から帰ってくるたびに、一回りも二回りも大きく成長しているのを感じた。
さらに、彼は昨年、学院代表としてデザイン関係の日中交流団の一員に送り出されて中国にも行った。
他の専門学校では教師などが参加していたし、業界の人たちもいて、彼は一番若く、学生としての参加は2、3人だったらしい。
その頃から、僕ら周りの大人は、
「学院代表か、ヨウヘイもなかなかやるねぇ。隠れた才能が発揮されだしたね。」と、前々から知ってはいたが彼の絵心というか絵の才能に喜んだ。
そんなことがあって、今回の卒業制作・優秀賞である。
小さい頃は、いろいろと周りが心配した彼だが、今回の作品を見て、改めて「彼は大器晩成タイプなのかも知れない」と、子供の想定外の無限の可能性と、彼の将来が楽しみになってきた。