今年最後の読書は三浦しをん著『風が強く吹いている』

 今日で今年も終わり、今日は大晦日だ。明日からまた新しい年が始まる。
 ここ何年か、お正月の行事の一つに、箱根駅伝観戦が定着しつつある。
 毎年1月2日の往路を、小田原中継点付近で応援する。
 これといった応援する大学はないが、選手の走る姿と、沿道の熱気に触れたくて、目の前を選手が走り去る時間は、たかだか20分か30分なのだが、今年も行こうとなる。
 今年の初めに「お正月はどこかに行ったの?」と、読書好きの友人に聞かれた時に「箱根駅伝を見に行った」と答えたら、勧められたのが箱根駅伝を舞台にした小説、三浦しをんの『風が強く吹いている』だ。
 三浦しをんの小説は好きなので、読もうと思っていたが、まだ読んでいなかった。
 年末になって、箱根駅伝が話題になり「1月2日までに読もう」とブックオフで探して読みだした。
            
 先ほど読み終わって、今年最後の読書本となる小説だが、実に面白かった。
 たかだか10人のメンバーで、それもボロ安アパートに惹かれて住みだし、それが縁で陸上競技など未経験の者をも巻き込んで、箱根駅伝出場に挑戦する物語だ。
 「駅伝」って何だ? 走るってどういうことなんだ? 
 その問いを、個性あふれるメンバーが、「走る」ことで見つけていく。
 そして、走ることで仲間の中で自分の存在を確認して、仲間との絆を育みながら、自分の限界に挑戦し、その限界を超越したところの未知の世界で、ほんとうの走る喜びを掴む。
 それは、限界に挑戦した者だけが得ることが出来る生きる喜びだ。

 最初は、未経験のランナーが? 補欠なしの10人で挑戦? などなど、こんなことあり得ないと思ってしまう物語設定。
 それと、主人公の名前が「走(かける)」なので、「走は、走りながら・・・」とか「走が走りに・・・」とかの記述に、読み方の戸惑いを感じながらの読み始めだった。
 しかし、それもほどなく忘れてしまって、物語の展開にのめり込んでしまう筆力は、さすが三浦しをんだと、読みながら感動する。
 特に、後半の箱根駅伝往路の章「彼方へ」と、復路の章「流星」になると、その展開が気になって、一気に読まざるを得ない衝動に駆られるほどだった。
 もう一つ、箱根駅伝は「関東学生陸上競技連盟登録競技者で、本大会出場回数が四回を超えない者。予選会のみ出場の場合も回数が含めれる」などの出場規定があることや、前年に10位以内に入れず推薦枠から外れたチームや初出場のチームは、秋に予選会があり、その予選会がどんなものであるのか、などなど、箱根駅伝の背景も知識として得ることもできた。
 それにしても、1区間20Km前後を、自分の限界に挑戦しながら、仲間を思い、自分を見つめて、ひたすら走り続けるランナー。
 そのランナーひとり一人はまた、いろいろなドラマを抱えながらの「走り」なのだということを、教えてくれる物語だった。

 2日の小田原での観戦が、より一層楽しみになってきた。