今日は「おくりびと」にも出演した山田辰夫さんの3回忌

 僕は、以前にも書いたが、机の引き出しの奥に3冊のシナリオ本がある。
 宮部みゆき原作の小説が映画化された「理由」。浅田次郎新撰組の無名隊士のひたむきな「義」の姿を描いた「壬生義士伝」。そして、アカデミー賞を受賞して話題となった「おくりびと」である。
 3冊ともに、今は亡き山田辰夫さんが出演した映画である。
 「理由」と「壬生義士伝」のシナリオ本は山田さんが直接プレゼントしてくれたサイン入りの本だ。
 「おくりびと」は亡くなられて暫くたった後に奥様から送られてきた。
 先の2冊を思い出の品として奥様の手元にお返ししようと思っていた時だったので、いささか恐縮していたら、人づてに「辰夫が生きていたらきっとプレゼントしたと思うから」と言って私に送ってくれたことを知って、なおさら恐縮してしまった。
            

 その山田辰夫さんが亡くなって2年がたつ。今日26日が3回忌。
 彼が出演した映画は多い。ほとんどがわき役であるが、個性派俳優として味のある役を演じていた。

 そんな彼は時々「最近どんな本を読んだの? いい本あったら貸してよ」と案内所に寄ることがあった。また、会の機関紙「けんさん」に、当時、私が若者をインタビューして記事にし連載していた「明日・次代を創る」を読んでくれていて、次号を楽しみに待っていてくれていた。

 ある時はお酒を飲みながら、映画についての話題になり、原作を読んだ感動が映像になって裏切られる事が度々ある、シナリオは原作に忠実であるべきか否か、そんな論議をしたこともあった。

 無愛想で人付き合いは決していいとは言えない彼だったが、男の優しさを心の奥に秘めていた。それが演技にも現れていた。俳優としても、友人としても、若くして亡くなったことが本当に残念に今でも思っている。

 そんな彼の演じたシナリオ本の3冊。自分の台詞に方言のアクセントなどを鉛筆で加えてあるのを見ながら、いつか、時期をみて、奥様にお返しするのが一番いいのだろうな、受け取ってくれるかな、そんな問いかけを繰り返すのである。