沖縄をテーマにした映画と新書

 最近、戦後70年ということと、辺野古基地建設ということで、沖縄をテーマにしたドキュメンタリー映画も多いし、書籍紹介も目に付く。
 僕自身、沖縄について「何を知っているのだろうか」と、そんな思いから、最近、知人に勧められたドキュメンタリー映画を観て、書店で目にとまった新書を読んでみた。


ドキュメンタリー映画うりずんの雨』
 この映画は、1ヶ月前から神保町の岩波ホールで上映されている。
 知人が「沖縄の歴史と、沖縄が抱え続けている問題がわかる映画で、見応えあるよ。」と勧めてくれた。
     
 確かに見応えのあるドキュメンタリー映画だった。
 監督は日本人でなく、アメリカ人のジャン・ユンカーマン監督だ。
 『沖縄戦』『占領』『凌辱』『明日へ』の4部構成で、元米兵、元日本兵、そして沖縄住民の体験を取材し、米国立公文書館所蔵の米軍の記録映像を挿入しながら、沖縄戦の実態、戦後のアメリカ占領期から今日に至るまでの米軍基地をめぐる問題、そして、現在の辺野古への基地移設問題までを、その時々の当事者達の証言を軸に克明に描いていた。
 驚いたことに、あの1995年に起きた沖縄米兵少女暴行事件の米兵一人が登場し、今でもそのことに悩み悔い、苦難の人生を送っている様子までもが収録されていることだ。
 太平洋戦争末期の沖縄戦と、その後の米軍基地の存続で翻弄され続けている沖縄の実態が、ズシリと胸に迫るドキュメンタリー映画だった。


◇新書『沖縄の殿様』
 この新書の著者は、時代小説や歴史小説を書く高橋義夫さんだ。
 サブタイトルに「最後の米沢藩主・上杉茂憲の県令奮闘記」とあるし、帯には「明治時代、沖縄の民を救うため、政府に盾ついた男がいた」とある。
 これで「面白そう・・」と思って買ってしまった新書だ。
       
 書籍説明に「謙信の流れをくみ、鷹山を中興の祖と仰ぐ名門、米沢藩上杉家。最後の藩主・茂憲は明治十四年、琉球処分から日が浅い沖縄に県令として赴く。本島をくまなく巡り、宮古・石垣両島まで及んだ視察で目撃したのは、困窮にあえぐ庶民の姿であった。再三の改革意見は政府から黙殺され、志半ばで解任される茂憲。だが、情熱を傾けた人材育成は後年になって実を結ぶ。今日もなお沖縄で敬愛される上杉茂憲の二年にわたる奮闘の記録。」とあるように、廃藩置県後の沖縄の実態と、その中で困窮著しい沖縄の人々に対して「上杉家の最後の殿様」は県政改革に乗り出すが、権益を守ろうとする旧士族と、その旧士族層の反乱を押さえるために「旧慣習温存」を基本方針とする政府に、1年11ヶ月で県令を解任されて、志半ばで沖縄を去る過程を著している。
 130年前の沖縄の実態なのだが、基地問題で政府と対峙している現在の沖縄と、そこに流れるものは、もしかして同質のものではないかと思ってしまう内容だった。