池井戸潤の新刊『ロスジェネの逆襲』を読む

 書店を覗いたら、店頭に池井戸潤の新刊が平積みされていた。
 池井戸潤といえば、直木賞を受賞した『下町ロケット』や『ルーズヴェルト・ゲーム』を読んで、正義が勝つと言うか、信念を持って仕事をすると言うか、そんな男の生き方に元気をもらった作家である。
 今回の新刊は、どんな内容かと手に取ると、企業買収の攻防の内容だ。
 今回も期待を裏切らないだろうと、日曜日に読んでみる。
          

 タイトルにある〝ロスジェネ〟とは、バブル崩壊後の不景気のトンネルにすっぽりと入り込んでしまい、出口を見出そうともがき苦しんでいた十年間、1994年から2004年に亘る就職氷河期に、世の中に出た若者たちのことを「ロスト・ジェネレーション」といい、略してロスジェネ世代と呼ぶらしい。

 今回の内容は、このロスジェネ世代に、バブル世代の主人公が、仕事をすると言うこととは何か、仕事を通して社会をつくるとは何か、などなど、自分の仕事ぶりを通して、世代を超えた男としての生き方に気付かせる内容だ。
 どんな逆境に立たされても、主人公の「正しいことを正しいといえること」という信念を持って、自分の仕事を遂行して、最後には逆転ホームラン。
 この新刊も、読み進めながら、ついつい引き込まれ、そして、読了後の気持ち良さは、やっぱり池井戸潤の小説の魅力だった。

◇文中から一つ引用
── 半沢はいった。「世の中を儚(はかな)み、文句をいったり腐(くさ)してみたりする。でもそんなことは誰にだってできる。お前は知らないかも知れないが、いつの世にも、世の中に文句ばっかりいってる奴は大勢いるんだ。だけど、果たしてそれになんの意味がある。たとえばお前たちが虐げられた世代なら、どうすればそういう世代が二度と出てこないようになるのか、その答えを探すべきなんじゃないか。」
 半沢は続ける。「あと十年もすれば、お前たちは社会の真の担い手になる。そのとき、世の中の在り方に疑問を抱いてきた君たちだからこそ、できる改革があると思う。そのときこそ、お前たちロスジェネ世代が、社会や組織に自分たちの真の存在意義を認めさせるときだと思うね。(以下略)」──

 これは、居酒屋のカウンターでロスジェネ世代の部下に、バブル世代の主人公が話す言葉だ。部下を一人の社会を担う人間に育てる。そんな主人公に僕は言葉に表せない魅力を感じてしまう。