早瀬耕著『未必のマクベス』を読む

 出張前に、往復の電車の中で読もうと思って見つけた文庫本が、この『未必のマクベスだった。
 早瀬耕という作家を僕は知らなかったが、この意味不明のタイトル(なんだろう?どんな意味だろう?)と、書店員が書いた手描きPOPの「デビューから22年ぶりの第2作」「近年一番の素晴らしい小説!」や、表紙にかかっている帯に「これほど素晴らしい小説はそうあるものでない。」などの言葉に惹かれて手に取った。

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 内容は、企業陰謀小説と、犯罪小説と、恋愛小説をごった煮したようなストーリーなのだが、登場人物一人一人のリアルな個性的描き方、舞台となっている東南アジアの都市の描写や、交わされる科白の大人っぽいお洒落な雰囲気、それらに不思議な魅力を感じて読み進めていくと、ハードボイルド的なストーリーの展開が気になって、結局、一気読みとなってしまった。
 内容が多岐にわたっていて、詳しくネタバレ的内容は書けないが、それにしても読み応えのある小説であるのは確かだというのが正直な感想だ。

 そんなことで、お薦めの一冊として、ネットにアップされている商品紹介「BOOK」データベースの内容を転載しておく。


── IT企業ジェイ・プロトコルの中井優一は、東南アジアを中心に交通系ICカードの販売に携わっていた。同僚の伴浩輔とともにバンコクでの商談を成功させた優一は、澳門の娼婦から予言めいた言葉を告げられる―「あなたは、王として旅を続けなくてはならない」。やがて香港法人の代表取締役として出向を命じられた優一だったが、そこには底知れぬ陥穽が待ち受けていた。異色の犯罪小説にして恋愛小説。伝説のデビュー作『グリフォンズ・ガーデン』から22年―運命と犯罪と恋についての長篇第2作。──

 

 蛇足になるが、タイトルの『未必のマクベス』について
 「未必」の意味は、必ずしもそうなるものではないといった意味合いの表現のこと。
 「マクベス」とは、シェイクスピアによって書かれた戯曲で『ハムレット』、『オセロー』、『リア王』と並ぶ四大悲劇の1つの物語。


 僕は、シェイクスピアの『マクベス』を読んだことがないが、読み終わった今、何となくそのストーリーがわかり、このタイトルに納得できる感じがしている。