孫崎 享著 『 アーネスト・サトウと倒幕の時代 』を読む

 先月、文京区民センターで開催された村岡到さん主宰の「友愛政治塾」で、元・外交官で国際問題に詳しい評論家、現・東アジア共同体研究所所長の孫崎 享さんの話を聴いた。
    
 北方領土問題が、何かとニュースになっている今、孫崎さん話は、その領土問題について、日米地位協定の内容など、ポツダム宣言に遡って、詳しく歴史的経過を解説してくれて、僕たちが知らない、知らされていない、ニュースの核心部分を端的に説明してくる刺激的内容だった。
 そのときに、近々、出版される著書を紹介されていたのが、『 アーネスト・サトウと倒幕の時代 』という著書だ。
      
 
 早速、読んでみた。
 幕末から明治にかけて日本に滞在した英国の外交官・アーネスト・サトウが、いかに明治維新に大きく関わり、影響を及ぼしたのかを、「桜田門外の変」から「生麦事件」、高まる「攘夷」の動き、薩長連合の形成と幕府崩壊への動き、その中での孝明天皇崩御が毒殺ではないか、坂本龍馬暗殺には薩摩が関わっていたのではないかなど真相を考察し、さらに、江戸城無血開城においては、いかにアーネスト・サトウと英公使のバークスが動き、西郷隆盛の決断に影響を与えたか等々を、現存する数多くの著書や資料がら時系列的に、その流れの必然性を考察している。
 著者が「おわりに」で、──「玉を取る」「錦の御旗を掲げる」それを得た人々が正当性を持ち、「玉を取った人々」「錦の御旗を掲げる人々」の政策が問われない形となりました。── と書いているように、僕たちが学び、知っている維新という歴史の定説に一石を投ずる内容となっている。
 つくづく、後年に語り伝えられる歴史は、その時々の勝者が都合よく正当性を主張して作り上げるものだというのが、本書を読むとよく分かる。